#202 私の物語 ページ2
真相など、わかってしまえばつまらない。
これは望んでもない生を手に入れた私の物語。
___遡ること数千年前。
私にはあの人がいた。
あの人___私の兄のイカロス。
兄は蝋で鳥の羽を固めて翼を作った。
そしてそれを使って空を飛び、塔から脱出した。
兄は私に見せびらかすためなのか、私の頭上を飛び回った。
父が兄に忠告した。
父「蝋が湿気でバラバラにならないよう、海面に近付きすぎてはいけない。それに加えて蝋が熱で溶けてしまうので太陽にも近付いてはいけない」
しかし、兄は「太陽にも到達できる」と言って父の忠告を無視して空高く飛び立った。
私は兄が予備で作った蝋で兄を追いかけた。
しかし、兄は太陽の熱で蝋を溶かされ落下した。
私もうまく飛べなくなり、頭から落下した。
足元には太陽。
頭上には兄。
兄が私より先に落下したので、脳漿が飛び散った。
私は兄の隣に真っ逆さまに落ちて地面に頭をぶつけた。
何分たったであろうか。
痛みは引かず、意識が覚醒した。
そして私は死んでいないことを知った。
背中に重み。
背中に手を回すと、そこには蝋ではなく、本物の翼が生えていた。
【兄を追ったあわれなエラレスよ。そなたは死ぬにはわかすぎる】
どこからともなく聞こえてきた声。
【そなたに人間を二つに区切る命令をだそう】
【選ばれた人間に魔法を教えるのだ。魔法を教えるには場所が必要だ。生身の人間と魔法使いを区別する場所を創設するのだ】
『そんなこと……そんなこと、したくない』
【愚かなことだ。兄の命と引き換えにお前を不老不死にしてやったのに】
『ふっ……不老…不死…？…兄は』
【兄は死に、お前は生きている】
『嫌だ…生きたくない。私も死にたい…』
【それはできぬ。自分にかされた命令をはたすまで死ねぬ】
私は頭上を見た。
私に話しかけてきたのは太陽だった。
兄の死体を抱き寄せながら私は歌うようにたずねた。
『Can you hear me？
私の声が聞こえますか？』
返事はなかった。
私は家に帰り、父にそのことを言った。
父は村の皆に私が化物だと言ったのだ。
父や村の皆に石を投げられながら、私は自分の居場所がもう無いのだと感じた。
優しかった父は一変し、私にこう言った。
父「この魔女め、死んでしまえ！」
私は魔女じゃない。
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こ - うおおおおおお最高でしたありがとうございました (2023年3月27日 15時) (
レス) @page20 id: 991a92c757 (このIDを非表示/違反報告)
アニマトロニクス(プロフ) - 最後の最後まで素晴らしい作品でした！食人鬼さんの作品に出会えてとても良かったです。 (2018年10月4日 6時) (レス) id: 538062cc7f (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - なるほど、質問に答えて頂きありがとうございました！ (2018年9月8日 21時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
名無し61903号(プロフ) - ぴのさん» 歳は取りません。しかし、主人公の精神年齢が低いのです。 (2018年9月8日 21時) (レス) id: f947700d9f (このIDを非表示/違反報告)
ぴの(プロフ) - 完結おめでとうございます。とても感動しました。質問なのですが、不老不死だと歳を取らないと言うことでしょうか？ (2018年9月8日 19時) (レス) id: 3707f5c19b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：食人鬼 | 作成日時：2018年8月31日 11時
