Female soldier 4【wrwrd!】 (ページ8)

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風ページ8

tn視点

「……さて、ちと休憩するかな」

両腕を天井へ伸ばし、立ち上がって腰を回した。

一昨日葬式やら何やらを済ませたばっかやけど、もう既にこの軍には日常が戻ってきとった。
チーノも昨日さっさと他国に行ってしもうた。なんだか、もう全てが随分遠い昔のように感じる。

……まぁ、それも一部を除いて、の話やけど。
シャオロンとショッピくんはここんとこ一日中ずっと泣いとるし、グルッペンは、……なんやろ、人が変わった。
二人が泣くのは分かる。シャオロンはあんま表には出さんかったけどAさんのこと一等可愛がっとったし、ショッピくんは大切な家族を失っとるからな。

でもグルッペンは、何か……おかしい。見えない壁を作られとるような感じがしてならん。
まぁみんなと同じように、娘同然のAさんを亡くしていろんな気持ちが渦巻いとるんやろうな。後悔とか、悔しさとか、悲しさとか、混乱とか。

……それで他の奴らに八つ当たりせんとええけど。それだけが気がかりや。総統とは言えあいつもまだ若い方やから、経験も浅いっちゃ浅いし、動揺だってする。
にしても、このタイミングでチーノを出させるのはちゃうと思った。あいつにはほんま申し訳無いことしたな……今度何か奢ってやろう。

はぁ……独りで部屋に籠っとると、考え事ばっかしてあかんな。散歩がてら、Aさんに挨拶しに行こう。

・

「ここはいつ来ても静かやなぁ」

空はよく晴れとって、風が心地よかった。
ふと、そこに置かれたクッキー缶に気がついた。他国の国旗がデザインの一部にあるから、きっと昨日出がけにチーノが置いてったんやろうな。

何気なく石に彫られた文字を指でなぞった。
あぁ、この娘(こ)はたった16年しか生きられんかったんやなぁ……そう思うと胸がきゅっと締まり、次第に涙が溢れてきた。一昨日は泣かんかったのになぁ。

「ふっ、うぅっ……こんなっ、こと、っあってたまるか…………っ！」

悲しい。胸が重くて、苦しい。自分が情けない。
どうか、向こうでは幸せに暮らしてほしい。こんな世界に生まれてきたらあかん。

「ははっ、ほんま……俺らしゅう、ないなぁ。シャキッとせんとな」

泣いたのなんかいつぶりやろ。久々すぎて頭痛いわ。

「これ、ボロやけどよかったら使うてな。まだ加齢臭はせんはずやから」

俺はマフラーを外し、石の前に畳んで置いた。

風がビュウと吹いた。
涙と思いを乗せて、届けてくれ。
そう願い、そこを後にした。