決意 ページ6
syp視点
目の前には美しいエンディングドレスに身を包み、花が詰められた箱の中で静かに眠るAの姿があった。
死に顔までもが美しくて、ほんまにし…………亡くなってるとは思えん。
先輩方が最期の言葉をかけたり、涙を流したりしているなか、俺は未だ出来ずにいた。
「……ショッピくん、もう、お別れやから、何か言うてあげな？」
とうとう見兼ねたトントンさんに声をかけられてしまった。
……認めたないけど、しゃーなし、や……いや、俺は兄貴や、最期くらいシャキッとせな。
「…………はい」
棺の前まで行き、Aの髪にキスした。クサいかもしれんけど、ええよな。
「っ…………またな、A。
短い間やったけど、……同じ時間を共有できて、よがっだ……っ！！」
あぁやっぱ、
「あっ、……ありがとう、な…………っ」
ぐっしゃぐしゃの顔のまま、なんとか声を振り絞ってそう伝えた。
涙は止まることを知らんかった。滝のように止めどなく流れても、悲しみや寂しさは泥のようにずっと残っとった。
兄サンとコネシマさんに肩を支えられて、棺から離れた。先輩は一緒に泣きながら背中をさすってくれた。
・
葬式は粛々と行われ、Aは白く細くなった。
「ショッピくんショッピくん、こっちおいで」
兄サンに呼ばれてAの方へ行くと、2cmくらいの小瓶を渡された。
「あの、うん……先、謝っとくわ。勝手なことしてごめんな」
訳もわからずポカンとしとると、兄サンはこう続けた。
「なんて言えばええかな……それ、Aちゃんの、
……あ、一応みんなには内緒な」
そう言って彼は眉尻を下げて微笑むと、先輩方の方へお酒を取りに去っていった。
「…………Aの、カケラ」
俺はそれをハンカチに包んでポケットに入れた。
そのとき、ふと、Aに呼ばれた気がして、冷たい小箱に収まった彼女の方へ向かった。
額縁の中で、にっこりと微笑むAがそこにはいた。
「A、ありがとう。大好きやで」
自然とそんな言葉が口から飛び出しとった。
胸の辺りがふわりと温かくなった気がした。
……しっかり、生きていかな。Aの分まで、しっかり。
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作者名：ウィング | 作成日時：2020年11月2日 8時
