ありがとう ページ5
綺麗な白い服を着て、花でいっぱいに飾られた私が棺に横たわっている。なんか不思議な光景だなぁ……一生見られないよね、こんな姿。
「やっぱいつ見ても別嬪さんやな」
「せやなぁ……お疲れさん、A」
「向こうでは、達者でね」
「うっうぅ……っA、ちゃん…………っ！」
「泣きすぎや、シャオロン……っAちゃんも悲しむやろがっ…………！」
「ほら、傷に響くよ。ロボロの言うとおり、Aちゃん、笑った顔の方が好きだってきっと言うで」
「もうちょっとAちゃんとお喋りしたかったなぁ」
「せやなぁ……もっと、いたずら以外にしてやればよかった……っ」
「えぇ、本当に……もっと色々なことを教えて、世界を見せてあげたかった」
「俺も、もっといっぱいスイーツ作ってあげればよかったなぁ……」
「……後悔が募る一方やな。ほんまに、Aさんはかけがえのない存在や」
と、幹部の皆さんはひとりひとり私に言葉をかけてくださった。
「……ショッピくん、もう、お別れやから、何か言うてあげな？」
「…………はい」
ショッピ兄はしっかりとした足取りで私のもとへ来ると、髪を一束手に取り、キスをした。
「っ…………またな、A。
短い間やったけど、……同じ時間を共有できて、よがっだ……っ！！」
その目からは、大粒の涙が流れていた。
「あっ、……ありがとう、な…………っ」
そう言うと彼はコネシマさんと大先生に肩を支えられて棺から少し離れた。
最後は、我らが総統閣下、グルッペンさん。
彼は私の手の甲にキスをし、
「……ありがとう、同胞よ。お前と出逢えたことを誇りに思う」
と、彼らしい言葉をかけ、微笑みかけてくださった。
あぁ、私も言葉を伝えられたらなぁ……口も喉もあるのに、一切伝わらないなんて。
・
翌日。
式は粛々と行われ、私は……私の器は、天へと昇っていった。
うちの軍には宗教や人種関係なく色々な人がいて、且つ小さい国だから土地もないため火葬されるのだ。
葬式中にどうにか肉体に入って復活！なんて出来ないかなーと思ってたけど、これで本当に復活できなくなっちゃったなぁ……。
……一か八か、懸けてみようかな。今の私なら、出来る気がする。
私はショッピ兄の方へ向かい、ハグをした。
「ショッピ兄、ありがとう。大好きだよっ」
少し……ほんの少しだけ、心が温かくなった気がした。
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作者名：ウィング | 作成日時：2020年11月2日 8時
