やせ我慢と優しさ ページ3
あのあとショッピ兄が行った方向へ行ってみると、救護テントに着いた。戦線復帰出来ないし、暇だった私はそのまましんぺい神さんのところにいることにした。
それから何日か経った、ある日のこと。突然スピーカー型の通信機からザザッとノイズが聞こえて、
[グルッペンだ。
総員、注意して聞くように。
たった今、ブライ国が白旗をあげたと連絡が入った。各自撤退をするように]
という連絡が入った。
あぁ、戦争が終わった。
救護隊は皆ほっと胸を撫で下ろしたり、仲間が亡くなってしまったのであろう隊員はしくしく泣いたりしていた。
しんぺい神さんは横たわる私を一瞥して、一粒の涙を流していた。
お世話になったもんなぁ……いつも気にかけてくれて、『いつでも来てええよ〜』って言ってくれて。
「すまん、手ぇ空いてるやつ、ここ頼む」
そう言って持ち場を隊員に任せると、彼は綺麗に並べられた
どうやらこれから私たちを輸送車に乗せるらしい。ひとりひとりの顔にかけられている布を外し、名前を確認して名簿に記しているようだ。
「うぅ……っくそ……っ！なんでこんなっ、……っ！！」
最後に残された私の顔を確認すると、しんぺい神さんは静かに嗚咽を漏らし始めた。
「っはぁ……勝っても、やっぱ嬉しないわ。こんな、うちの……可愛いAも、殺 されてまう戦争……なんか、嫌いや」
「隊長……」
「……あぁ、ごめんな。ちょっと取り乱してもうたわ」
その苦しそうに笑った彼の顔が脳裏に焼き付いた。胸がぎゅっと締まった感じがした。
私を乗せ、胸の前で十字を切り、手を組んで祈りを捧げている最中、しんぺい神さんは、再び静かに涙を流していた。
もし、もっと私が強ければ。
もし、もっと私が注意していれば。
もし、怪我していなければ。
もし、ナイフを握っていたら。
もし、私が男だったら。
考えれば考えるほど後悔や無念が降り積もっていく。
「ふぅ……さ、あともうちょっとだから頑張ろう」
そう悲しそうに笑いながら、しんぺい神さんは手をパパっと叩いて場の士気を上げていた。
あともうテントを畳むだけになったとき、撤退中であろうショッピ兄が来た。その目には、歩いているだけで零れ落ちそうなくらいの涙が溜まっていた。
「しんぺいさん」
「ショッピくん……戦争、終わったな。お疲れさん」
あぁ、あなたは、優しすぎる。
泣くのを堪えないで下さい、しんぺい神さん…………。
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作者名：ウィング | 作成日時：2020年11月2日 8時
