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ゆらゆら、と澄んだ焦げ茶色の瞳が揺れる。
ミケが威嚇するように軽く鳴き声を上げた。
「…えっと。」
「……。」
「…ッあー…そんな顔しないで。俺は、誰にも言うつもりないからさ。」
「…ありがとう、ございます。」
「…学生時代なんてそんなモンだから。俺も経験あるしさ。」
からり、と笑う彼に視線をあげて、軽く愛想笑いを浮かべる。
いつもより流暢に流れる言葉は、きっと素の彼から溢れているのだろう。
目の前に広がる海の音が、少しだけ遠くなる。
肩に染み込んだ雨の跡が、潮風に吹かれて冷たくなった。
「…今日の夜は冷えるらしいから気を付けて____や、これ貸した方が早いか。」
ぱらり、と肩に掛けられた大きなカーディガンに、柄にもなく狼狽えてしまう。
慌てて彼の手を払い除けようと、後ずさった。
「…ッや、あの、大丈…。」
「いーのいーの。…あ、泊まるなら近くにいくつかカプセルホテル有ったと思うよ。」
なんて。
ご丁寧に泊まる場所の事まで教えてくれた彼に、何か裏があるのでは無いか、と疑ってしまう。
所詮この世はギブアンドテイクで出来ているのだから。
くい、とスカートを握りしめる。
身体を売って、お金を稼ぐバイトをしていた同級生も居たか。
それの類いなのだろうか。
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作者名:青碧 | 作成日時:2020年9月11日 0時