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ページ9

ゆらゆら、と澄んだ焦げ茶色の瞳が揺れる。

ミケが威嚇するように軽く鳴き声を上げた。





「…えっと。」

「……。」

「…ッあー…そんな顔しないで。俺は、誰にも言うつもりないからさ。」

「…ありがとう、ございます。」

「…学生時代なんてそんなモンだから。俺も経験あるしさ。」





からり、と笑う彼に視線をあげて、軽く愛想笑いを浮かべる。

いつもより流暢に流れる言葉は、きっと素の彼から溢れているのだろう。

目の前に広がる海の音が、少しだけ遠くなる。

肩に染み込んだ雨の跡が、潮風に吹かれて冷たくなった。





「…今日の夜は冷えるらしいから気を付けて____や、これ貸した方が早いか。」





ぱらり、と肩に掛けられた大きなカーディガンに、柄にもなく狼狽えてしまう。

慌てて彼の手を払い除けようと、後ずさった。





「…ッや、あの、大丈…。」

「いーのいーの。…あ、泊まるなら近くにいくつかカプセルホテル有ったと思うよ。」






なんて。

ご丁寧に泊まる場所の事まで教えてくれた彼に、何か裏があるのでは無いか、と疑ってしまう。

所詮この世はギブアンドテイクで出来ているのだから。

くい、とスカートを握りしめる。

身体を売って、お金を稼ぐバイトをしていた同級生も居たか。

それの類いなのだろうか。

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作者名:青碧 | 作成日時:2020年9月11日 0時

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