六月へ消える (ページ7)

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青く広がる海とは裏腹に、空はどんよりと憂鬱げに曇っていた。

まるでつまらない、とでも言いたげな空の色にどこか共感をおぼえる。

きっと、私もつまらない日々をただ延々と過ごしていたからだろう。

しかし、自由を知った私は、もう以前の生活には戻れない。

そう分かっているからこそ、駅から踏み出すのに少しだけ怖気付いた。

「…コンビニって飴売ってたっけ。」

みゃおぅ

「…そうだよね、売ってるよね。」

みゃおぉ

ミケを抱えて、震えた2本の足へ鞭を入れる。

自由になりたいと願ったのは自分なのだ。

はじめての一歩は、酷く重く、そして鎖を断ち切るような爽快感があった。

開放感と共に、アスファルトの上をローファーが滑る。

軽く響いた音は、コンクリートを打つ靴の音よりもよっぽど美しかった。

遠くから聞こえる波の音に、胸が高鳴る。

体に纏わりつく潮風に、微笑みが漏れる。

コンビニエンスストアの電光掲示板へ足を進めながら、ぽつぽつ、と降って来た雨に思わず顔を上げた。

制服と髪に雨の雫が染み込んで、体温を奪っていく。

そんなことすら、どうでもよかった。

ただ、解放されたという事実だけが身体の中を回っていた。