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思い出の場所巡り 一日目 ページ4

先日、神宮寺先生とひとつ約束をした。記憶を少しでも早く取り戻せるよう、麻天狼の三人と共に思い出の場所を巡ろうという約束だ。ただし、神宮寺先生も一二三くんも独歩くんも忙しいから、そこまで頻繁に行けるわけではないけれど。
そうして、今日が思い出の場所巡り一日目。

丁度身支度を済ませた頃にインターホンが鳴った。モニターで確認すると、立っていたのは案の定麻天狼の三人。部屋の電気を消すと、玄関の扉を開いた。

「おはようございます」
「おはよっす〜!」
「おはよう、Aくん」
『おはようございます』

軽く挨拶を交わすと、戸締りを確認し、三人でエレベーターに乗り込んだ。
あ、そうそう。これは余談だけれど、一二三くんと独歩くんも同じマンションに住んでいるらしい。どうやら二人は同居しているんだとか。
エレベーター内は僕たち以外誰もいなくて、静かだった。少し気が緩んでいたせいか、つい欠伸をしてしまった。

『ふわぁ…』
「おや、欠伸だなんて珍しいですね。寝不足ですか?」
『いや、その…お恥ずかしい話なんですが…今日が楽しみで、あまり眠れなくて…』
「はははっ!ゆっきーらしいな〜!」
「ああ、だな」

僕らしい、か。記憶を失う前も、僕はこんな感じだったのかな。…記憶がなくなっても、人は変わらないらしい。
そんな話をしているうちに、ポーンと到着の合図が鳴り、エレベーターの扉が開く。僕たちはマンションを出て、目的地へと歩き出した。

『そういえば…一二三くん、なんで僕の事「ゆっきー」って呼ぶの?』

確かに苗字に雪という漢字は入っているけど、読み方は違うし…少し、気になっていたんだよね。

「苗字に雪が入ってるってのもあるけど〜…ゆっきーの肌、雪みたいに真っ白なんだもん!」
『ああ…自分ではあんまり思わないけど、確かによく言われて…た、っけ…?』
「あはは!それすら覚えてねーのかー!」
『うん。本当に何も覚えてないみたい』
「ゆっくり思い出せばいいよ。君が記憶喪失ってことはハゲ課長にも伝えておいてたし、仕事の方は大丈夫…のはず…」

仕事の事を思い出してしまったのが余程辛かったらしく、「クソッ…ハゲ課長め…俺の仕事じゃないものまで押し付けてきやがって…」と、なにやら仕事の愚痴を言い始めてしまった。
それにしても、独歩くんは課長の事ハゲ課長って呼んでるんだ。どんな人だったっけ、課長。うーん…やっぱり思い出せないや。
…本当に、何も思い出せないんだな、僕。

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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年3月21日 12時

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