偏頭痛 ページ8
キラキラした光。
それが視界に映ったら、一時間以内に頭痛が来る合図。頭痛が始まる前に、薬を用意しておこう。
そう思い自室の作業用デスクの引き出しを開けた。しかし、そこには薬は無い。
そういえば、前回の発作で切れたんだっけ。
…もう診察時間外だよね。どうしよう。
『兄さん、偏頭痛の薬って、予備ないっけ？』
「あ？確か、前回で無くなったとか言ってなかったか？」
『だよね…』
「薬ないと辛そうか？」
『うん…』
「…先生に連絡してみっか」
『いやいやいや！寂雷さんにまで迷惑かける訳にはいかないし、我慢するから大丈夫だよ』
「いーから、ちょっと待ってろ」
僕の制止を聞かず、兄さんは寂雷さんに電話を掛け始めた。事情を説明すると、どうやら承諾して頂けたらしく、兄さんは寂雷さんにお礼を言い電話を切った。
「いいってよ。車だしてやっから、すぐ行くぞ」
『うん、ありがとう、兄さん』
「礼は俺じゃなくて先生に言っとけ」
『ふふ、そうするよ』
そんな感じで、兄さんにシンジュク中央病院に連れていってもらった。車から降りてからは一人。寂雷さんが話を通しておいてくださったらしく、すんなりと中に入ることが出来た。
診察室の前につくと、コンコンとノックをした。
「どうぞ」
落ち着きがある低い声が中から聞こえ、ガラッとドアを開けた。そこには寂雷さんだけじゃなく、伊弉冉一二三さんと観音坂独歩さんもいた。
「久しぶりですね、Aくん」
『ええ、ご無沙汰しております。一二三さんと独歩さんも、お久しぶりです』
「お久〜！」
「ひ、久しぶり…だね」
すっと診察室の椅子に座った。
一二三さんはいつも通りハイテンションだったけれど、独歩さんは肩を竦めながら顔を引きつらせていた。
どうやら独歩さんは、僕がヤクザの弟ということもあり、僕に苦手意識を持っているようだった。少し寂しいけれど、仕方の無いことだと思う。
「偏頭痛の薬が切れてしまったそうですね」
『はい…ご迷惑おかけして、すみません』
「いえ、Aくんにも左馬刻くんにもお世話になっていますからね。これくらいの事はさせてください」
『ありがとうございます。それでは僕はこれで。寂雷さん、一二三さん、独歩さん、また』
席をたち一礼し、三人に背を向けると、寂雷さんが口を開いた。
「お大事に」
「お大事にー！」
「お大事にして下さい」
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作者名：眠兎 | 作成日時：2022年1月6日 21時
