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お出かけの約束 ページ23

兄さんガ退院して数週間。寂雷さんから完治するまでは絶対安静と言われていたのに、兄さんはそれをまったく守る気がないらしく、売られた喧嘩はすべて買っているという報告を呆れ気味の銃兎さんから受けた。僕からちょっとだけお説教をすると、少しだけ大人しくなったようだった。
松葉杖をつきながらお仕事から帰ってきた兄さんと夕飯を食べていると、あちらから口を開いた。

「お前、明日休みだろ?」
『?うん、お休みをいただいたよ』
「じゃあどっか出かけるぞ。明日までに行きたいとこ考えとけ」

下を向いていた顔を上げそれだけ言うと、スプーンで掬いあげたコンソメスープを口に運んだ。
兄さんと出掛けるのは、いつぶりだろうか。勿論兄さんとお出かけできるのは嬉しいけれど、なんでいきなりそんなことを提案してきたのかという事に疑問を持った僕は、それを問うた。

『わかったけど、どうしてそんなことを?』
「あぁ?弟と出掛けんのに一々理由なんていらねぇだろうが」
『それはそうだけど…兄さん、そういうタイプじゃないじゃん』
「…別に、気分だよ、気分。まぁ、強いていうなら…今回の事の迷惑料、みたいなもんだ」
『迷惑料って…別に僕は迷惑だなんて思ってないよ』

これは本心だ。兄さんの行動に振り回されはしたし、心配して夜も眠れなかったけど…それを迷惑だと思ったことは一度もない。

「そうかもしれねーけどよ…なんかしねーと気が済まねぇんだ。いいから、一日俺にくれや」
『…勿論。楽しみにしてるね、兄さん』

「一日俺にくれ」ってなんだか女の子への口説き文句みたいだなと思いながら、兄さんの言葉に頷いた。すると心なしか兄さんの表情は明るくなる。僕も人の事は言えないけれど、ブラコンは健在のようだ。僕も人のこと言えないけど。

「ごちそうさま。今日も美味かった」
『お粗末様。食器だけ水に浸けておいてくれたらそれでいいよ。兄さんはゆっくりしてて』
「おう、ありがとな」

リビングテーブルからキッチンへはほんの数歩だからと、松葉杖も使わずけんけんでキッチンへ行くと、皿を水に浸け、またもけんけんで今度はソファの方へ向かった。ソファに腰かけると、テレビをつける。一連の流れを見守ると、残っていたコンソメスープを一滴も残らず飲み干した。
お皿洗いをしながら、たまに兄さんの方へ視線をやる。兄さんは僕の心配などいざ知らず、ソファに全体重をかけ退屈そうに僕と同じルビーを半分閉じテレビを見ていた。

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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年1月6日 21時

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