捨てられない -まふまふ- (ページ2)

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苦しい夢からさめて、無意識のうちに止めていた息を吐き出した。
夢。じゃなくて現実であった事で、未だにボクを縛り続けて解けない程に雁字搦めになっている。

待って。も、嫌だ。も言えないまま終わってしまったから。
きっと後悔してるだけだと、どれだけ言い聞かせても抜け出せなくて。

「気分悪……」

最悪な寝起き。
それはここ数日続いていた。

もう何年も前のことなのに、なんで今更。

「忘れた筈なのになぁ」

ベッドから起き上がるも、何かをする気力は起きない。

もうすぐ、ワンマンツアーが控えてるっていうのに。
タイミングが悪い。とかいう問題ではない。

本当に今更、なのだ。

体をムチを打つように、無理やり足を動かして。
重たい体を引き摺るように寝室から出れば、窓の外は青い空と白い雲が覆っていた。

僕といえば白。
どんな色にでも染まってしまうけれど、僕は何にも染まりたくなくて。
そんなの建前。

彼女が白が好きだったから。

ただ、それだけでペンライトの色は白。

こんなの誰にも言えない。

もう二度と会えもしないあの子を僕はまだ探してる。

バンド活動の裏で必死に貯めたお金で買ったお揃いの服も、記念にと買ったテーマパークのキャラクターカチューシャも。
ずっとずっと、捨てられない。

彼女は“まふまふ"を知ってくれているだろうか。
曲は聞いてくれたことあるだろうか。

たまに書く恋愛ソングなんて、全部全部彼女に向けて。

未だに恋を知ることが出来ないのは、心のどこかで彼女を想っているから。
彼女以上に好きになれる人はいないから。

高校生のたかが2年半の恋。
不器用で、面と向かって好きとも言えない2人の拙い恋。

それがあの頃の僕にとって、そして今の僕にとって、心地いいものだったのだ。