一話【力を有するもの】 ページ1
体中についた赤い液体を手で払う
目の前には人の形を取り戻していく異形
先程救急の連絡を入れたので、軽いメッセージを置いて、その場を離れる
__ここは、アルティマ
リディム帝国の首都だ
立ちこむ建築物に一際目立つ大きな城
王族が住む城だ
そしてその近くに聳え立つまた古風な建物
軍人が普段生活する場だ
青年は人目に付かないよう裏路地を迷わず歩いていく
黒い軍服を風にたなびかせ
黒い軍帽を被り直し
響くヒールの音は辺りを萎縮させる
彼は軍の最高峰と崇められる第零番隊
通称【軍神】の
オリオン・グラトニス
幼少期から軍に所属している男だ
愛刀を腰に二つ下げ、軍人用のコートの下にも二丁ほどの拳銃を身に付けている
黒と金のオッドアイはこの世界では極めて珍しいものだ
そういえば、と今朝のことを思い出す
隊長が新人が来ると言っていた気がする
それとなく新人も気になる
如何せん第零部隊は他の部隊よりも
先ほどより足を早めて、軍事基地に向かう
完全に落としきれなかった血液のおかげで表に出れないので仕方なく、近くにあった壁を伝って屋根を上を超えていく
一番の近道だ
胸元のバッチを零と書いてあるものから玖と書いてあるものへ変える
【軍神】と崇められるものから【変わり者】【お飾り隊】へと姿を変える
第零から第玖まである部隊で玖番隊は所謂落ちこぼれ隊。メンバーも変わり者が多く、軍というお飾りを羽織った出来損ない
それが零番隊の偽りの姿
少し歩けば周りからは罵倒のような声が聞こえる。本来の姿を知らず見た目のみで仕事ができるかどうかなんて判断するやつは気にしなくてもいい
それが部隊長の言葉だ
軍事基地の最奥、玖と書かれた部屋の扉のドアノブを捻る
わいわいと騒いでいた声がピタリと止む
「………パーティか何かか?」
何時もなら部隊長趣味の簡素で爽やか系な部屋がまるでパーティ会場の如く賑やかな部屋になっている
一番はしゃいでいたのは隊長だったが
「ほら!新人くんもどうせなら楽しいとこがいいでしょ?!だから飾ってみた!!」
「後片付けをするなら私も何も文句はないがなぁ…部屋を片付けられないのは何処のどいつでしたか?えぇ?」
「うわーー!!僕です!!!!」
浮かれ模様のくそ隊長に頭を鷲掴みにしながら仕方なくオリオンも新人歓迎会の準備を始める
…さて、新人はこの強烈な猛者達に耐えられるんですかね…
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作者名:慎 | 作成日時:2019年1月3日 4時