雪降るドイツの探偵卿 (ページ17)

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２日後の夕方ページ17

「クイーンさん、失礼します」

　ノックをしてから、クイーンさんの自室に入る。クイーンさんがどこに、何のために行ったのかなどの、謎を解くために。他のところはもう徹底的に調べたけれどいたって普通で、おかしな所は１つも見つからなかった。わたしは、ここに何か手がかりがあるのではないかと踏んでいる。

「ああ、フェールちゃん。部屋に来るなんて珍しいね、どうしたんだい？」

　クイーンさんは最近一番お気に入りの綺麗な毛並みの黒猫・ノイルを胸に抱き、ベッドに座っている。値段の高そうなそれには、黒い猫の毛がいくつもくっついている。いつも猫と一緒にいるが、クイーンさんはほかにすることがないのだろうか。

「いえ、これといった用はないです。気にしないでください」

　そう言いながら部屋を観察する。クイーンさんの言った通り、わたしはこの部屋にほとんど来ない。風邪が治ったあと、トルバドゥールの中を一度すべて見回った時以来だ。しかし、部屋の構造やなにが置いてあるかなどは、すべて覚えている。
　すっと辺りを見回すと、いくつか目についたものがあった。

　一つ目は、いつもＲＤさんがバラを生けている花瓶がないこと。たしか２０センチくらいの高さで、植物柄のあしらわれた、品のいいものだった。どこかほかの場所に移したのだろうか。

　二つ目は、暖炉の上に人形が置いてあること。体長６０センチくらいで、肩までの黒髪に赤いフリフリのドレスを着ている。クイーンさんの部屋はとても豪華で、その人形が置いてあること自体はあまり不自然ではない。気になるのは、その人形が手を前に突き出した格好をしていることだ。最近は、こんな変わった人形が流行っているのか。

　三つ目は、丸テーブルの上に、よくわからないオブジェのようなものがのっていること。Ｔの形をしたものの上に、真っ赤な球がのっている。その球とＴ字のものは丈夫そうなひもでつながっている。何をするものなのか、わたしには見当もつかない。

　さて、他に気になる所はない。そろそろここを出ようと思ったが、このままだと何をしに来たんだろうとクイーンさんに疑われる可能性がある。別にそれが悪いというわけではないが、なんとなくいやだ。出るのは世間話でもしてからにしようかと思い、わたしはクイーンさんの方に近づく。