名探偵には嫁がいた。3【江戸川乱歩】

・ ページ24

とまぁそのような事がこれから先3年も続くのだが。

Aの乱歩の呼び方が江戸川様から乱歩さんへと変わった、齢が17の年のある日。

Aはいつものように夕飯を済ませ、軽く仕事をした後お風呂へ入り、自室に戻って部屋の灯りを消すと、布団に入って眠りについた。

ここまではいい。

いつも通りの平常運転。

だが、問題はここからだ。

真夜中。

物凄い音と共に、稲妻が走った。

途端に、激しい雨の音が聞こえてくる。

これのどこが問題か、説明しよう。

Aは大の雷嫌いなのだ。

福沢と一緒にいても、抱きしめてもらっても怖いものは怖い。

なので雷の日はいつも寝不足である。

今すぐにでも福沢の元へ行きたいが、生憎腰が抜けてしまい動けない。

Aはぎゅっと目を瞑ると、躰を丸めて頭から布団をかぶり、枕に顔を押し付けた。

できるだけ音が聞こえないように、両手で耳をふさぐ。

けれど完全に聞こえなくすることはできず、音は聞こえてくる。

恐怖に怯えていると、自室の扉が開かれる音がした。

そんな日常的な生活音でさえ、恐怖を覚えてしまう。

ぺたぺたと床を歩く音が聞こえる。

足音は、Aの近くまで来るとぴたりと止んだ。

ぽふっ、と布団を叩く音がした。

びくっと躰が震える。



「……A」

・→←名探偵と付き合うまで

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す