【文豪ストレイドッグス】貴方とだけは恋に落ちない【短編集】

理解しなくていい【梶井基次郎】ﾘｸ ページ5

「やあ、誰か思えばAくんか！御機嫌よう！」

「…梶井基次郎。」


妙なサングラスと缶バッチで飾ったボロボロの白衣。

私は、



ｰｰｰｰｰｰこの男が苦手だ。



〜･〜･〜



「…」

「おっと、今日はご機嫌斜めかい？」

「あなたといる時は大抵私は機嫌が悪いわ。」


同じマフィアの構成員で、(何故か)この人の任務に同行させられることが多い。


「(…けど、)」

「そうそう！昨日また新型爆弾を作っていたんだ！
もちろん檸檬型の！

近いうちに実験だ」


そう、大抵は持ち前の檸檬型爆弾で勝手に突っ込んで暴れてくるので、

下手をすればこちらまで巻き添えになる始末。


…その癖、いつもペアを組まされる理由といえば、



「あなた、いつも私の同行を首領に頼んでるんだって？」

「おや、どうしてそれを？」

「首領から直接聞いた。」


私がそう答えると梶井はにんまりと口角を上げてから、

うはははは！と大声で笑った。


「そうか、まあ理由は自分で研究してみるといい！」

「あなたは研究好きよねえ…


この間は実験と称して28人殺しだって？」

「ああ、あれは素晴らしい実験だったよ

今度は君も付き合うかい？」


そう嬉嬉として語る梶井にため息をついて、

私は「断る」と一言返した。


「ふむ、となるとまた新しい理由付けが必要だな。
君といるための。」


「…何言って…ってわっ…！」


最後の一言に気を取られた隙に、近くの段差でつまづいて体制を崩す。


「(やばい、転ぶ…！)


…っ、梶井？」

「大丈夫かい？」


咄嗟に私を受け止めてくれたのは、梶井の大きな腕だった。


「確りしてくれよ。

華奢な君なら少し転んだくらいでも怪我することくらい、
検証しなくてもわかる。」

「…余計なお世話」

「ははは、もう少し君を観察してみるのもいいな！」


そうまた笑って梶井はずんずんと先に行ってしまった。

その後ろ姿を見ながら、私はぎゅっと胸をつかむ。



……あの一瞬、心臓がいつもとは違う跳ね方をした、気がする。


「ああ、…嫌だ。」




ｰｰｰきっとその意味はまだ、理解しなくていい。

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