届かぬ手【中原中也】リク ページ4
首領からの任務とはいえ、
「またてめぇとか太宰…!」
「私だって中也と任務なんてうんざりだよ。
私には姉さんがいるもの!」
「いいからさっさと行くよ治。」
この二人と共に、となるとドタバタして仕方ない。
ぎゅっと抱きついてくる弟、治をため息をついて振り払うが、
それでもにこにこしながら着いてくるのに、
「(一体どこで育て方を間違えたのだろう)」と思わない日はない。
「中也くんも、ほら。行こう。」
治と一緒になったせいで機嫌が悪い中也くんに、
苦笑しながらそう言って手を差し伸べると、
中也くんも目をそらしながらおずおずと手を伸ばしてーーーーーー
「姉 さ ん ?!
中也なんかいいから早く行こう!」
……中也くんが手をとる前に、治がぐいっと私のもう片方の手を引いた。
「太宰てめぇ!!」
「おっと、忘れているかもしれないが姉さんも太宰なのだからね?」
そう言ってまた始まる言い争いに、
いつになったら行けるのだとため息をつく。
「…Aさん、こいつ置いていきましょう」
「いや、姉さん、中也置いていこうよ。
これくらいの任務なら二人で十分だ。」
二人はそれぞれ私の肩を片方掴んで、ぐいっと迫ってくる。
…ああ…もう、
「いい加減にしなさい!二人とも!」
ーーーーーーそんな私の怒号が響いたことで、その場は収まった。
〜・〜・〜
「お疲れさま、中也くん」
「…ありがとうございます。」
仕事終わりに、人通りの少ない路地の端で腰を下ろして
買っておいた缶珈琲を中也くんに渡す。
彼は先程とは違い、穏やかな表情で笑った。
「ごめんね、いつもいつも。」
「いえ、…太宰の野郎はどこに?
さっきから姿が見えね、…ないですが。」
そう、この場に治はいない。
というのも、つい先程通りかかった川で急に
「良い川だ!」と叫んで落ちていったからだ。
それを中也くんに伝えれば、「ああ…」と苦笑いを浮かべていた。
「でも、本当にいつもありがとうね。
嫌でしょう?太宰姉弟といつも一緒も。」
疲れを隠しきれていない中也くんに、
困った弟を思い出しながらそう笑う。
中也くんは、しばらく黙っていたが
「いや、」と呟いて私の隣に座った。
「そうでも、ないですよ。
あんたと…Aさんと一緒なら」
「…え?」
「いくら鈍感なあんたでも、こんくらい分かりますよね?」
今度は肩ではなく後頭部を掴まれ、引き寄せられて、
ーーーーーー手が届かぬなら、
理解しなくていい【梶井基次郎】リク→←心を透かされて【江戸川乱歩】
87人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「文豪ストレイドッグス」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ねぎ。(プロフ) - こんばんは!お久しぶりです。またリクエストしてもいいですか?最近中也にハマってしまって。文乃さんの書く中也短編が読みたいです!お時間あるときでいいのでぜひよろしくお願いします!!! (2017年12月24日 23時) (レス) id: c5589df126 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 書いて下さってありがとうございます。凄く感動しました。これからも応援しています。頑張ってくださいね。 (2017年12月21日 10時) (レス) id: 860abbe074 (このIDを非表示/違反報告)
夏姫 - 太宰の妹幼女主12才久と仲良し太宰をにぃに中也にぃと呼んでる太宰は主が久と仲良くするのが気に入らないが主は久と仲良し。太宰は主に溺愛お願いします。 (2017年12月18日 20時) (レス) id: 10c4a5c371 (このIDを非表示/違反報告)
淀川文乃(プロフ) - 夏姫さん» そう言っていただけると本当に嬉しいです!また是非お願いします(^O^) (2017年12月16日 22時) (レス) id: cdf7dc42de (このIDを非表示/違反報告)
淀川文乃(プロフ) - あかりさん» リクありがとうございました!ご期待に添えていれば幸いです(^^) (2017年12月16日 22時) (レス) id: cdf7dc42de (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:淀川文乃 x他1人 | 作成日時:2017年12月11日 23時