知りたくなかった【太宰治】 ページ1
昼下がりの探偵社、
いつも通りのデスクワークをこなしていると、
ひょこりと太宰が横から顔を出した。
今日はみんな出払っていて、ここに居るのは私と彼だけだ。
「ねえねえ、A
この後、下の喫茶店でお茶でもどう?」
「生憎、仕事。
…ていうか太宰もこの間の事件の報告書、まだ出していないでしょう」
「あはは、今日も手厳しい。
でも、私は君のそういう所も好きなんだよねえ。」
そう、
この大宰という男は私の同僚であり、歳が同じなのでよく話したり飲みに行く仲ではあったのだけど、
最初は冗談交じりだった口説き文句が、
最近エスカレートしている気がしていた。
「あのねえ…人をからかうのもいい加減にして!
そうやって冗談ばかり…」
はあ、と溜息をつきながらそう言うと、
太宰はピタリと言葉を止めて私のすぐ後ろに立つ。
「太宰…?」
振り返ろうとすると後ろから肩を押さえられて出来ない。
…太宰の表情が見えない。
そして、最初肩に置かれた手はゆっくりと前に回されていく。
手を一々私の身体に添って触れながら動かすから、余計に恥ずかしい。
結果的に私は抱きしめられたようになってしまった。
抵抗しようにも、何故だか太宰に触れられたところが痺れたように動かない。
「A」
「っ…///」
しかも、耳元に彼の口があるせいで、
吐息がかかるわ低い声が響くわで、
顔が熱くなったのが自分でもわかった。
太宰はわざとか吐息混じりに言葉を続けた。
「それじゃあ、冗談で無ければ応えてくれるのかい?A
…私は君に、冗談で好きと告げたことはただの一度もないのだけど。」
どこか寂しげにそう言って、腕が解かれる。
「太宰っ…」
そんな声を聞かされたら、嫌でも表情が伝わってしまう。
そう慌てて振り向くと、今度は向かい合うように肩を掴まれて、
「頬を赤くしてそんな顔をされたら、私だって期待してしまうよ。
…ごめんね、A」
そう言って唇に、彼のそれを静かに重ねた。
「っな…な…///」
「…ふふ、君のそんな取り乱した所は初めて見た。
でも嫌がらないってことは、このまま続きをしても構わないってことかい?」
そういうと腰に手を回され座っていた椅子から強制的に、ソファの上まで連れていかれる。
太宰はカチャリと探偵社の扉を閉めてから言った。
「拒むなら今だよ、A」
ああ、狡い。
ーーーこんな気持ち、分かりたくなんてなかったのに。
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ねぎ。(プロフ) - こんばんは!お久しぶりです。またリクエストしてもいいですか?最近中也にハマってしまって。文乃さんの書く中也短編が読みたいです!お時間あるときでいいのでぜひよろしくお願いします!!! (2017年12月24日 23時) (レス) id: c5589df126 (このIDを非表示/違反報告)
あかり(プロフ) - 書いて下さってありがとうございます。凄く感動しました。これからも応援しています。頑張ってくださいね。 (2017年12月21日 10時) (レス) id: 860abbe074 (このIDを非表示/違反報告)
夏姫 - 太宰の妹幼女主12才久と仲良し太宰をにぃに中也にぃと呼んでる太宰は主が久と仲良くするのが気に入らないが主は久と仲良し。太宰は主に溺愛お願いします。 (2017年12月18日 20時) (レス) id: 10c4a5c371 (このIDを非表示/違反報告)
淀川文乃(プロフ) - 夏姫さん» そう言っていただけると本当に嬉しいです!また是非お願いします(^O^) (2017年12月16日 22時) (レス) id: cdf7dc42de (このIDを非表示/違反報告)
淀川文乃(プロフ) - あかりさん» リクありがとうございました!ご期待に添えていれば幸いです(^^) (2017年12月16日 22時) (レス) id: cdf7dc42de (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:淀川文乃 x他1人 | 作成日時:2017年12月11日 23時