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「おーい、Aさん」
その数日後、大学の帰り
足早にクラウンを通り過ぎた私の背中を、
永瀬さんの声が、追いかけてきた
「今帰んの？」
気がつかれないように通ったはずだったのに。
声をかけられてしまえば、止まるほかなくて。
私は足を止め、振り返った
お店の入り口、彼が立っている
『………こんにちは、今帰りです、』
「そうなんや。最近忙しい？」
『まあぼちぼち、もうそろそろ4年なので。』
「あーそっか、そうよな。」
永瀬さんが、ちょっとだけ顔をくしゃっとさせる
その時、彼と岸さんに初めて会った日から、
ずいぶんと時間が経ったことに、気がついた
「まあでもたまに、息抜きとかしに来て」
『、考えときます、』
永瀬さんはしきりに私を誘ってくれるけれど、
私はなかなか、岸さんと顔を合わせにくくて。
すると、私の微妙な反応に彼は、すっと息を吐く
そして少しだけ、微笑んだ
「岸さん、毎日フルーツタルト一個残してんで。」
なんて突然、そんなことを言われても。
『………フルーツタルト、』
「そう。多分、Aさんのために」
ずるいなぁって、思ったよ。
岸さん、あなたはずるい。
全身を駆け巡るいろいろな種類の感情に、
ついまた、涙が溢れそうになった
『………永瀬さん、』
「、おん」
『なんか岸さんって………、岸さんって、優しいですよね。』
泣くまいと、必死に歪ませた口角
あなたのことはまだ何もわからないけれど、
間違いなくあなたは、優しい人だった。
永瀬さんが、小さく頷く
「まー、優しいよな。良くも悪くも」
「あの優しさがたまに人を傷つけてるってこと、本人はまだ気がついてないみたいやけど。」
辛辣だけど、なんだか少し
本当に少しだけ、その言葉の意味が、
わかるような気がした。
『………、今日は、帰りますね』
「わかった。またいつでも顔出しに来てー」
『はい、ありがとうございます永瀬さん』
「いや、こちらこそありがとね。」
小さく、私に手を振る彼
お辞儀してクラウンの前を離れる時、
不意に見えた、お店の中
カウンターの奥で、コーヒーカップを片手に、
岸さんが、私を見ていた。
その真っ黒な瞳は、今日も何も語らない。
私は今日も、あなたがわからなかった。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» いつもありがとうございます。いろいろな見方をしてくださっていて本当に嬉しいです…！恋っていいですよね、本当に。最終章も何卒よろしくお願いいたします♡ (2022年6月12日 14時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんにちは。第３章完結、お疲れさまでした。廉くんの一心な思いを受け入れてほしい！と思いつつ、岸君への感情をもち続ける主人公ちゃんの一途さにも心打たれたりして。恋する気持ちって甘酸っぱくてやっぱりいいな。最終章も楽しみにしてます。 (2022年6月5日 16時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - 詩愛さん» もちろん読まさせてもらいます！💕最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を見届けます♡ (2022年6月3日 17時) (レス) id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - 伶奈さん» コメントありがとうございます！いつも楽しみにしていてくださっているみたいで本当に嬉しいです…！最終章、公開いたしましたので是非読みにいらしてください♡ (2022年6月3日 13時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
伶奈(プロフ) - このお話めっちゃ好きで続きが毎回気になるところで切られてて早く見たいってずっと思ってます！！次が最終章なのがちょっと寂しいですが最後まで岸さんと主人公ちゃんの恋を全力で応援したいと思います💕 (2022年5月26日 0時) (レス) @page50 id: 7a01d9d841 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2022年4月13日 19時
