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・
何があったか。そんなこと何ひとつ覚えていない
思い出そうとしても、頭が鈍く痛むだけ。
どうやら私は本当に、記憶を失っているらしい。
「A、おはよう。」
「………、」
大人たちの話をこっそり聞いてしまった次の日
いつもいるあの男女が、私の部屋にやってきた
挨拶をしてくるけど、私の方は返事ができない
「……えっと、気分はどう？お腹は空いてる？」
「別に、大丈夫です」
無理して笑っている女性の視線が痛くて、無愛想に答えてしまう
すると男性の方がフッと鼻から息を吐き、
屈んで、私と視線を合わせた
「A。私たちがお前の両親だよ。」
優しく、だけどどこか悲しげに、
彼の瞳が輝いて、私をまっすぐに見つめる
両親。私の、父親と母親。
「……そう、なんですか。」
「そうだよ。お前は、私たちの大切な娘だ」
母親らしき女性が、涙を必死に堪えているのが見える
何もわからない、何もわからないけど、
この状況が、かなり痛く苦しいものだということだけは、理解することができた
「今は、私たちのことがわからないと思う。」
「だけど忘れないでくれ。私たちが、お前の家族だからね」
父親と名乗った男性が、そっと、私に微笑む
私は、感情まで鈍ってしまったみたいで、
ただじっと、苦しそうなふたりを見つめることしかできない
「……今お前はね、記憶がないんだ。」
「………、」
「そのうち、私たちもきちんと説明できるようになってから、いろいろ話させてほしい。」
きっと、心が張り裂けそうなほどつらいのだろう
ぼろぼろと泣き出す母親と父親
私はまた、ふたりを見つめるだけ。
相変わらず何もわからず、
何も、思い出せない。
涙を拭うふたりの後ろ、開け放たれた窓
生暖かい風が吹き込んで、白いカーテンが揺れる
「………、」
お互いを支え合い、私に寄り添う両親
少しだけ見えた空は、真っ青に晴れていて、
なぜか、泣いてしまいそうになった。
・
夜、真っ暗でひとりきりの病室
布団にくるまっていると、ピキリと頭が痛む
あの日見ていた、夢の中
私の、愛しい人。
何もかも覚えていないけれど、
その中でも、忘れてはいけないものがあった気がして
ぎゅっと目を閉じる
大切な人、だったはずなのに。
思わず溢れた一筋の涙は、
真っ黒な夜に、静かに溶けていった。
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詩愛(プロフ) - zzzさん» こんばんは！お久しぶりです！また読んでいただけて嬉しいですありがとうございます^^ 少しずつですがお話をまだまだ書いていますので、楽しんでいただけたら幸いです。こちらこそいつもありがとうございます！ (2021年10月30日 23時) (
レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
zzz(プロフ) - 詩愛さん、こんばんは。大変ご無沙汰しておりましたが、詩愛さんの作品の香りを嗅ぎ付けてやって来てしまいました( ￣▽￣)まずは第一章お疲れさまでした。これから先の展開もドキドキさせていただきますね。いつもありがとう。 (2021年10月29日 19時) (レス) @page50 id: f02299600f (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ひだかくんさん» いつもありがとうございます！いろいろ気になることがたくさんありますよね……ぜひ今後の展開にも期待してくださいね。ありがとうございます、無理せず更新いたします！ (2021年8月4日 23時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
ひだかくん(プロフ) - 高評価が一回しか押せないのがすごく悔しいです(ToT)廉君と主人公ちゃんがこれからどうなっていくのかなとか、きちんと思い出せるのかなとかめっちゃ気になります笑 作者さんも無理のないようにしてくださいね！ (2021年8月3日 23時) (レス) id: 10f3d7dc91 (このIDを非表示/違反報告)
詩愛(プロフ) - ミツキさん» ありがとうございます！まだまだ先は長いので、今後もどうぞよろしくお願いいたします！ (2021年7月26日 15時) (レス) id: 3902959af9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：詩愛
| 作成日時：2021年7月24日 16時
