蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ36)

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君はその日のうちに早速チョコケーキを食べたみたいで。

次の日、教室施錠でまた2人きりになった時、

「Aちゃん、昨日ほんとにありがとね？」

君は暖房を消しながら少しだけ私に、笑ってみせた

「まじでおいしかったよ。食べんのもったいなかった」

「喜んでもらえてよかった、」

ほっとして思わず口角が上がる

自然とこぼれた私の笑顔に、君は一瞬驚いたように目を見開くと、

「………もー、そういう笑顔とかさ、」

と、困ったように笑った

……だけど、言葉を続けない神宮寺くん

首を傾げる私の前で、君はふぅ、とため息をつく

そして、少し上目遣いに私を見つめると、

「………我慢できなく、なっちゃうじゃん、」

少しだけ苦しそうに、目をそらした

沈黙が訪れる2人きりの教室

しばらくして君が口を開く

「………行こっか、」

「………あ、うん、」

教室を出ていく君のあとを追う

その背中を見つめると、

甘酸っぱくて、なぜか涙が出そうだった

・

ホワイトデーの日

もしかしたら何かあるかな。とか、期待しないようにしよう。とか、

ぐるぐるたくさんの気持ちを抱え込んだまま、校門をくぐった

教室に向かいながら、またしても心臓がどきどきしてくる

がらりと教室のドアを開けると、ざわざわと男子に囲まれている神宮寺くんが真っ先に目に入ってきた

「早く言えよ～～」

「隠すなって！！」

君は、周りの男子にがやがやと絡まれていた

「だーから、言わないって」

困ったように眉毛を下げる神宮寺くんを横目に、自分の席につく

すると突然、1人の男子の声が私の耳に飛び込んできた

「マジで誰にあげるんだよ！！！」

まさか、とは思った。

そっと君の方を盗み見ると、

君の机の上に、綺麗にラッピングされた、お菓子。

誰かに、あげるの？

ふいに、君とぱちりと目が合う

「なあマジで。女子にあげんだろ？」

男子たちの声がする中、君は私を見つめたまま、

ふと、口角を上げて、口を開いた

「………あげるよ、」

ざわつく男子にかまわず、君は、

「俺の本命の子に、ね」

私から視線を、そらさない

だけどその直後、興奮した男子たちの背中で君の顔が見えなくなった

ねえ、期待、

してもいいのかな。