蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ37)

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そわそわしたまま、その日の授業をこなす私

お昼休みになると、君が私のところにやってきた

「Aちゃん、放課後なんだけど、」

「音楽室、来てもらえないかな」

私にだけ聞こえるように、真剣な顔でささやく君に、

やっぱり、期待してしまう

「わかった」

「ありがとう、よろしくね」

微笑んで私から離れていく神宮寺くん

速くなる鼓動が、止まらなかった。

「「さようなら～」」

やっと帰りのホームルームまで乗り切ると、変に緊張している自分に気がつく

先生をちらりと見たけど、今日の雑用は無さそうだ

「がんばれよー！」

「はいはい、ありがと」

教室の端の方には、男子に絡まれて迷惑そうな神宮寺くん

なんだかすべての状況に心拍数が上がって、

心臓が壊れてしまう前に荷物をまとめると、急いで音楽室めざして教室を飛び出した

ふわりふわりと心が揺れたまま入った音楽室

なんだか落ち着いていられなくて、奥の席の机に突っ伏した

私、図々しく期待しちゃってる。

何にも深い意味はなくて、君は今日、ただお話をしたくて私を呼んだだけかもしれないのに。

なんて、そんなこと今まで一度もなかったけど。

ぐるぐると考えを巡らせて数分後

音楽室のドアがひかえめに開けられた

ゆっくり机から顔を上げると、

「あ～いたいた。ごめんね、ちょっと絡まれちゃってて」

なぜかいつもよりかっこよく見える君が、

「ううん、大丈夫だよ」

さっきのラッピングされたお菓子を片手に現れたんだ

君は少しずつ近寄ってくると、私と目を合わせて微笑む

「バレンタインは俺からお願いしちゃったのに、作ってくれてありがとう。」

「……私こそ、もらってくれてありがとう、」

心臓の音が、聞こえちゃう。

「これ、ホワイトデーの。お返しです」

そう言って差し出されたのは、

やっぱり、朝君の机にあったそれで。

「………うれしい、ありがとう」

受け取ってすぐに感じる、甘いお菓子の香り

こんな幸せなことがあるだろうか。

もう一度お礼をしようとふと見上げると、神宮寺くんは、

まっすぐに、私を見ていた

心の奥が、ぎゅっと縮む

「ねえ、Aちゃん、」

静かな音楽室の真ん中で、

君はささやいた

「もう俺の気持ち、気付いてるでしょ？」