蒼く、染まれ Y.J（２） (ページ11)

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「……無理して食べなくても、良かったのに」

公園をあとにして、暗い街を私の家に向かって歩きながら、君が呟く

「………」

黙り込む私

別に、無理して食べたわけじゃない。

嫌いだけど、チョコは嫌いだけど、

君がくれたものだから、食べたかったの。

下を向いたまま黙り続ける私に、神宮寺くんもついに質問を諦めた

君と2人きりなのに、

何も話せない、この空気

「………あっ、」

「おっと、」

その時、小さくつまづいて転びそうになった私の腕を、君がつかむ

「大丈夫？」

「うん、」

「……ほんと、無理して飲むなよ」

君が心配そうに私の腕をぐっと引き寄せると、ぴたりのくっつく肩と肩

「……心配だから、今だけ。離れないで」

「わかったよ、」

「足元気をつけてね？」

「うん、」

君はこんなに心配性、だったかな。

私が知らなかった、だけなのかな。

初めて見る君の姿に、なんだか心の奥がうずいた

周りを過ぎて行く景色

ゆっくりと歩き続ける私たち

「………私の家、まだおぼえてたの？」

だんだんと家が近づいてきて、君の記憶力に驚く

「忘れたと思ってた？」

「もうとっくに、ね」

私の言葉に、神宮寺くんは少しだけ笑った

「俺、そんな薄っぺらい男だと思われてたの、ショックだなー」

「さあ、どうだろ、」

「……まあ、無理もない、か。」

君の目が遠くなる

きっと今、別れたあの日のことを、思い出してるんでしょ？

なんて、聴けなかったけど。

「送ってくれて、ありがとう」

「どういたしまして。次からお酒には気をつけてね」

家の前まで来たのにまだ心配そうな君に、いじわるをしたくなって、

「じゃあ、次からは神宮寺くんには連絡しないね」

そんな風に言い返してみる

すると途端にこわばる君の表情。だけどそのあとすぐに、

「………まあたしかに、別に付き合ってないもんね、俺ら」

そう言って、無理に笑うんだ

今きっと、私たちはお互いの首を絞めたね。

「……ちゃんと布団で寝なよ？」

まだ心配の色がある君の目

「そんなに心配なら部屋まで来たらいいのに」

「……その言葉の意味、わかってる？」

わかってる、わかってるのに。

「……酔いすぎ。また誘うね」

「じゃ、おやすみ」

君は私に背を向けて

夜の闇に、消えていった。