劣化コピー【瀬名泉】

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「優しいんですね」




ベンチに戻るとルカちゃんが言った。




「別に優しくなんてないよ」




なんとなく、真くんに似ていたから。


いつも泣いている真くんを励ますのが私の役目だった。


今ではすっかり泣かなくなって、むしろ頼もしくなった。


ドジるところは相変わらずだけど。


するとルカちゃんはなにかを考える素振りをする。


これもれおくんに似ていた。




「さっきから思ってたんですけど……Aさん…自分を低評価してませんか？」


「Aさんは素敵な方ですよ。とっても」




少しだけ、元気になれた。


こんなに自分を見てくれて、褒められるのは……いつぶりだろうか。





〜〜♪♪






突然、ルカちゃんの携帯がなった。




「お兄ちゃんが早く帰ってこいって……」




ルカちゃんは携帯を見てこう言う。


ルカちゃんはさあっと青くなる。


家ではれおくんはルカちゃんに厳しいらしい。


学校ではシスコン丸出しなのに。




「すみません、Aさん。これ、私の連絡先なので…もしよければまたお話しませんか？」




そう言ってルカちゃんは急いで家に帰ってしまった。


よっぽどれおくんが怖いのかな。




「あ……」




道、聞きそびれた……


どうしよう…


取り敢えずその辺りをぐるぐると歩いてみることにする。




ポツっ




突然、頬を何かが濡らした。


涙ではない、雨だ。


雨は徐々に勢いを増していく。


もちろん傘なんて持っていない。


近くにいた黒猫が鳴きながら近くの家に入った。


困り果てていたその時だった。




「A？」








今まで私を濡らしていた雨が、誰かの傘によって塞がれたのは。




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