愛が如何とか哀だとか (ページ2)

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アバンチュール R=S ページ2

夢を見ていた。
見ていた？いや、魅ていた。
少女漫画によくあるイケメンヴァンパイアと村人の禁断の恋。
アバンチュールとはよく言ったものである。

火遊び(アバンチュール)

首から下げた小さなロザリオ。貴方に会う度に幾つも砕けていった。これで幾つ目だっけ？ああそうだ十七個だ。そう、十七個。

「律儀じゃのう？いちいち数を数えるなんて」

紅い瞳の吸血鬼が云った。

嫉妬する程美しい髪が私の首筋に触れる。そこにたてられた鋭く白い牙はツッと皮膚に入り込む。

もう声も出ないほどに慣れて仕舞った一連の行為(吸血)。肌に伝うまでもなく上手にたいらげられる血は果たして美味しいのか。それは彼にしかわからない。

ぢゅる、ぢゅる、ぢゅる

鼓膜(こまく)に響く厭(いと)わしい音。愛おしくもあるその音も聞き飽きた。いつになったら声で聞かしてくれるのかしら、なんて疑問が浮かぶ。

愛してる、はもう要らないの。好き、が欲しい。

夫婦、よりも恋人が素敵。愛、よりも恋、が魅力的。

けれども、そう思うのは私だけみたい。どうやら彼もそれは同じみたいで毎日刺激が強い。色で表すのなら、そうね、"黒" かしら。もうこれ以上、何色にも成れやしない黒。

でも私、そんなのは嫌！どんな色も素敵に仕上げる"白" が一番素敵なの！赤なら桃色、青なら水色。ねえ、素敵でしょう？だけど、黒ったら駄目ね。あれはどんな色も途端に消してしまう。価値を殺してしまうわ。

「A、愛してる」

「ええ、私も好きですよ」

ほうら。またその紅い瞳が、熱が私を捕らえた。それに捕まる私も大概の愚か者ね。恋の魔法とは恐ろしいものよ。

くるくる。私の髪を愛おしそうに弄(もてあそ)ぶ白い細い指が二つの跡を掠めた。ピリッとなんだか痛いような気がした。

そんな私を見てニヤリと唇で弧を描いた吸血鬼の意地の悪さと来たら、底が知れないものである。

でも矢張り、欲しいものは欲しい。貴方の恋心、瞳、唇、私なんかが奪うなんて烏滸(おこ)がましいのかもしれないけれど。

私の心情に気づいているのであろう彼は私を抱きしめる。愛を伝えるための行為。私にとっては恋を伝える行為。

私たちはお互いが求めているものを、与えあっているものを知っている。解って、解ってお互い見つめ合っている。

でも、それでいいのだと二人一緒に納得して互いの隣に腰掛けている。

ああ、ロザリオが一つ、壊れた。

アバンチュールとはよく言ったものである。