42 / 光の正体 ページ43
side M
「真っ暗……」
車のナビに従ってそのクリニックの近くへ行くと
辺りは真っ暗で、その中にポツンと、でも煌々とそれが建っている。
まるで、
闇から救ってくれる光みたい。
「……入れる、かな、」
出来る限り顔を隠そうと、マスクで鼻を覆う。
どんなところか、見るだけ。
怪しかったらすぐに帰る。
僕だ、ってバレそうになったら帰る。
心の中で、誰かもわからない相手に言い訳をする。
言い訳してる時点で、っていうのは、僕だってわかってるんだけど。
綺麗なエントランスの扉を開け、中に入れば
すぐ傍に何か書いてある看板と、エレベーター。
『 患者様のプライバシー保護のため、お一人ずつお入り下さい。』
『 エレベーター開閉ボタンが押下可能でしたら、入室可能です。』
ちゃんとしてる、なんてつい感心してしまう。
じゃあ、他の人と顔を合わせなくていいんだ。
「……ていうか、一応患者なんだ…、」
クリニック、なんて表向きだけなんだと思ってた。
本当は、ちゃんとしてるところだったりして。
いや、そんなわけないんだけど。
「………ここ、？」
エレベーターに連れて行かれた先には、
白を基調とした、待合室のようなところ。
待合室っていっても、看板に書いてあったように他に人は居なくて。
どうしたらいいのかわからず突っ立っていると
その先の個室から誰かが出てくる。
50歳くらいの、優しそうな雰囲気の男の人。
驚きと戸惑いと、それらがぐるぐると混ざって緊張に変わり
ぎゅ、と両手を絡めて握る。
僕の癖だ。
緊張や怖さが渦巻いているとき、何かを強く握っていないと不安になる。
「こんにちは。初めてですか？」
「ぁ、……はい、」
「説明だけでも大丈夫ですので、よければこちらどうぞ」
いつも仕事で出てる声はどこにいってしまったのか、
一生懸命出しても小さな声しか出なくて。
行くか行かないか、選択肢を与えてくれたのに
緊張でそれを選択することも出来なくて、流されるままに頷いて個室へとついていく。
個室、って
やばいかな。
もし怪しいところだったら、逃げられないじゃん。
.
でも、まぁ
いいか。
これで何かあれば、どうにかなってしまえば
僕の人生はここまでだったっていう、運命。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 262人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
