35 / 彼の長所 ページ36
side O
電話かけてきなよ、って
数回念押しして、彼の家を後にする。
この2時間、特に何もすることなく
未だ身体に力の入らない彼を、凭れるよう促して肩を抱いていた。
今日の仕事はなくしておいたこと、
明日の仕事も気にしなくていいこと。
仕事のことを考えただけで怖いくせに気にしている彼にそう伝えると
「明日は行かなきゃ、」とか細く答えて。
それだけで震えるくせに
泣いてる自覚さえないくせに
どこまでも真面目で、責任感が強くて、完璧主義で。
俺らが彼の長所だと、素敵なところだと思っていたことすべてが
きっと、彼にとっては重荷になっているんだろうと感じた。
俺らが見ていた彼と
彼が見ていた ”彼自身” が、違っていた。
同じ人物の、同じ部分を見ていたはずなのに。
「………、」
彼の家の前へ迎えに来てくれた車の取っ手へ手を伸ばす。
冷たいはずのそれが、少し温かい。
「……ニノ、」
「うん、お疲れ様」
扉を開ければ、そこにはニノの姿。
様子を見に来れば俺のマネの車があったから、話をしようと乗り継いだらしい。
確かに、ふたりも会いに来れば逆にプレッシャーになるかもしれない。
「……どうだった、？」
「ううん、昨日から体勢も変わってなかった」
「やっぱり…、」
「……仕事のこと考えると、苦しくて震えるって」
背凭れにすべてを預けて、複雑な顔をして息を吐く彼は
ひとつ頷いた。
「……明日の仕事も断るように話付けたほうがいいよね」
「や、それが…、明日は行かなきゃとか言ってて、」
「でも…そんな体調で無理でしょう」
「そうなんだけど…、昨日は話も聞こえてなかったからアレだけど、今日は聞こえてたし…、本人がそう言ってるのに勝手にキャンセルも出来ないじゃん」
「まぁ…、そうだけど」
「…夜、もう一回来て話してみる」
「なら夜はみんなで行こう、様子見に来たってことで」
「ん、夜は一応…連絡入れとこう、」
空気が重い。
誰のせいでもない、
誰のせいにも出来ない。
むしろ、気づかなかった俺らのせいなんじゃないかとさえ思う
そんな状況に、空気があまりにも重い。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
