31 / 彼らの理由 ページ32
side S
開いてるらしい、と
兄さんからの伝言を相葉くん伝いに聞いて。
松潤の家の扉を、そっと開けた。
扉が閉じられた音がずっと響くような、それほど静かな空間が怖くて
出来る限り音を立てないようにと、静かにリビングへ向かう。
初めて見るわけじゃない、数回見たリビングの明かりが
少し薄暗く見えた。
ソファには、抱きしめる兄さんと
その腕の中で身体を震わせる松潤の姿。
「………、」
ふ、と隣で、肩を落とす仕草をする人。
相葉くんが、眉を顰めていた。
一歩彼に近づき、ゆっくり歩を進めた相葉くんは
そっと、彼の背中に触れる。
少し身体が跳ねた彼が、ゆっくり振り返る。
「ごめん、驚かせたね」
心の底から心配そうな、そんな表情の相葉くんを見た彼は
溢れていた涙を、さらに溢れさせて。
未だ微かに震える手で
もうどうしたらいいかわからないというように、瞳を覆う。
おそらくずっと求めていた誰かからの優しさと
でも止まらない涙と、心が一杯になるほどの溢れる気持ちと。
抑えていたものが溢れて、仕方ないんだろう。
そして、自分の感情を拾う癖がないから、どうしたらいいかわからないんだろうな。
「………苦しくなっちゃうよ、」
「……潤くん、声抑えなくていいんだよ」
声を必死に我慢しようとするから、どうしても呼吸が苦しいものになる。
大声をあげて泣いたほうがきっとラクなのに、彼にはその癖さえない。
俺らが見ていた彼は何だったんだろう。
きっかけがあればすぐに壊れかけてしまう彼に、俺らはどうして気づかなかったんだろう。
ずっと、ずっと
呆れるくらい傍に居たのに。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
