30 / 沈んだその先 ページ31
side O
【明日の松潤の仕事は一旦キャンセル。
マネージャーは渋ってたけど、押し切っといた。
今からそっち行きます】
相葉ちゃんからの連絡を
ソファで膝を抱えて蹲る彼の肩を抱きながら確認した。
彼に伝えるべき内容だけど、今はやめておこう。
「…………もう、帰っていいよ、」
ずっと黙ってたくせに、突然そんな言葉を口にする。
たぶん、俺が携帯を見たことに気づいて
めんどくさいと思ってるとか思い込んでるんだろうな。
これもたぶん、彼の ”いつもと変わらない気遣い” 。
今までの俺らなら、よく気づけるなとか、気遣いできる奴だなとか思ったんだろうけど
今は違う。
ここまで気を遣って、その上思い込みだとなれば
相当人との関わりがしんどいんじゃないかな。
あの日の5人飲みの、路地裏で蹲る彼の
疲れ切った一瞬のあの表情が浮かぶ。
あの日もたぶん、気を遣いすぎて疲れてたんだろう。
「違うよ、ごめん、相葉ちゃんからの連絡見てただけ」
「……でも、」
「帰りたいなんて思ったんじゃないから大丈夫、」
力が出なくて項垂れたままの顔を覗き込んで
察したことを伝えると、止まっていた涙がまたじわじわと溢れてくる。
誰かに気持ちを察してもらう経験が浅すぎるのかもしれない。
彼は俺らや人の気持ちをすぐに察することができるのに
もしかしたら俺らは、彼の本当の気持ちを察することが出来てなかったのかな。
「………大丈夫だから、潤」
睫毛を震わせて涙を零す彼があまりにも儚くて
このまま消えてしまってもおかしくないくらい儚くて。
肩を抱いているからただでさえ近い距離を
さらに近くするように抱きしめた。
彼は、見返りを求めるような奴じゃない。
自分が人の気持ちを察することが出来るからと言って、相手にも自分の気持ちを察しろなんて
そんなこと言う奴じゃない。
でも、それが ”当たり前” になってしまえば
彼だって、心に波は立つ。
見返りは求めないけれど
それが当たり前になってしまうのは違う。
5人の関係を、改まって振り返ったり改善点はないかと考えたり
そんなことはしてこなかった。自然と続けていた。
だから、わからない。
俺らは、彼のこの ”気遣い” を
当たり前のような態度で受け取っていたのかどうか。
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ヲ伽 -otogi-(プロフ) - Kazue Akasakaさん» コメントありがとうございます✨『らしい』という言葉がとてもうれしいです、、！楽しんでいただけるようにがんばりますので、ぜひお付き合いよろしくお願いします🥰 (2022年11月24日 14時) (
レス) id: a5fdc137e0 (このIDを非表示/違反報告)
Kazue Akasaka(プロフ) - こちらでのコメントは初めてさせて頂きます。ヲ伽さんらしい繊細なお話で続きが楽しみです。 (2022年11月23日 19時) (レス) @page5 id: fbdba45f48 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年11月23日 18時
