102 / 僕が想うこと ページ10
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” おかしい ”
” ヘン ”
” なにこれ ”
数日前、僕が僕の身体を見て放った言葉たちが
脳内で再生される。
「そんなこと言わなくたっていいのに、」
我ながらひどいな、って
ちょっと思っちゃう。
記憶がなかったからって、そこまで自分の身体のことをひどく言わなくたって。
「違ってたとしてもヘンじゃないよ」
「僕は、この僕が好き」
背後でシャワーが大きな音を立てて降り注ぐ中、
そっと身体を抱きしめてそう呟く。
小さな窓から注がれる月明かりに
夜が恋しくなる。
髪も、顔も
目も、唇も
ぜんぶ、ずっとこのままなんだもん。
夜が、恋しくなる。
「………夜の楽しみがなくなっちゃったなぁ、」
別に、日中に出来ないことはないんだけど
まぁ、僕の職業柄。ね。
シャワーを終え、ベッドへ戻る。
夜の楽しみ、何か増やせないかなぁって考える。
諦めが悪い。
僕の性格。
「や、でも……今は、あっちを考えなきゃ」
” 俺、あの人のこと ”
” 好きなの ”
「どうしようかなぁ、」
「それがわかんないかぎり、ずっと僕は記憶喪失のフリしなきゃいけない」
そっと、僕の手を開く。
じっと見つめる。
” そういえば、彼だけ ”
そう気づいたとき、すべてが蘇ってきて
彼と一緒に落ちたことも、その彼があの人だということも
ぜんぶ、思い出した。
あの瞬間はまるで、僕がふたり居るみたいだった。
繋いでいた手を離した。
さようなら、そう言って、記憶のない僕は消えた。
そんな感覚。
「気づかれてるかなぁ、」
「でも……、僕だけじゃないよ」
やっと、
僕は僕に会えた。
そんな感じがする。
あぁ、でも
記憶を失くした僕にも、知ってほしかったな。
この身体にも、この僕にも
きっと貴方も満足できるよ、って
知ってほしかったな。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
