口癖 -3- (ページ25)

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117 / 僕のことページ25

side S

「インターセックス、っていうの」

ニットストールにそっと手を添えて

彼は、いつもと変わらず話し始めた。

「身体の機能とか作りが、一般的な男女の形と違うの」

「……生まれつき？」

「うん、生まれつき。日本では、なんだっけ……性分化疾患、みたいな名前」

「じゃあ数値って、その……検査結果みたいなもの？」

「うん、そう」

「それは……今よく言われる、ジェンダーとかとは違うんだよね、」

「そう、なんかそう思っちゃう人も多いらしいけどね」

姿勢を正すように座りなおして、

柔らかく続ける。

「性自認がどっちかとか、そういうことじゃなくてそもそもの話」

「うん、なるほど」

「だからまぁ、身体の状態を指すだけの言葉だね、インターセックスって」

「なるほど…、」

「インターセックスの中にもいろんな種類があるみたい」

「種類？」

女性の身体の機能が異なるもの、

男性の身体の機能が異なるもの。

そして、細胞などは男性で身体も男性であっても、外見が女性に発達したり

その逆であったりするもの。

ひとつにインターセックスと言っても、様々らしい。

「だから自分は男、女、って思って生きる人も居るだろうから、別に中性ってわけじゃない、これ自体はね」

「うん、」

「でも僕は、性別を持たない」

淡々と説明をしていた声色から

突然、はっきりとした意思を持つ声色に変わった。

「物心ついたときから、僕の世界に性別なんてないの」

「だから中性でもなんでもない」

「僕は僕だから」

初めて聞いた、と思った。

彼がそう思っていたことはわかっていたけれど

彼は、言葉では表現しなかったから。

初めて聞いた。

でも、慣れ親しんだ言葉。