132 / 僕と貴方の共通点 ページ40
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僕の検査なんて嘘。
退院前の検査は今朝済ましてる。
ニノの検査をしてほしかった。
それが、前からずっと先生に頼んでいたこと。
そろそろはっきりさせようと思った。
だから今日、時間を取ってもらった。
「………先生、」
急かす僕を見て
先生は眉を下げる。
目を瞑る。
首を横に振る。
あぁ、やっぱり。
「……………異常はない、どこにも」
「………うん、」
「…………本当に、落ちた理由が違うんだね？」
「違う、…………仕事のことでなんて言い争ってない」
ニノが、先生からの検査としての質問にどう答えたか
それを教えてもらった。
やっぱりニノは、仕事のことで揉めて落ちたと思ってる。
「……………記憶喪失は、僕だけじゃない…」
複雑そうな顔の視線が降ってくる。
記憶が抜け落ちてても、誰も気づくはずがない。
本人は忘れてるし、まず僕にしか話してない。
「おそらく解離性健忘だろう。一番大切にしていたであろう記憶が消えてしまったんだ。事故の衝撃もあるけれど、心因性の部分もある」
「………取り乱してた、あのとき」
「うん、」
「たぶん、ずっと抑えてた気持ちが爆発したんだと思う、………僕のせいで」
「………潤、それだとおまえにストレスがかかる。その考えはなくそう」
心配してる目だ。ありがたい。
でも、僕がニノに聞いたんだ。
”翔くんと何かあった？”、って。
心配もあった、でもきっと自分の予想の確証がほしかったのもあった。
聞かなければよかった？
でもそれならニノは、誰にも言わずにずっと独りで抱えてた。
自分の感情がおかしいと思い続けてた。
「潤。それよりも考えるべきことは、二宮さんに伝えるかどうかだ」
”伝えるかどうか” ……？
「…………二宮さんには結果が出るのに時間がかかると適当に誤魔化すから、考えなさい」
「……………待って、……ちょっと」
「うん、待つから」
決められない。
そんな重要なこと、僕に。
伝える怖さも、伝えない怖さも
どちらも、消化出来ない。
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作者名：ヲ伽
| 作成日時：2022年5月22日 18時
