口癖 -3- (ページ37)

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129 / それぞれの世界のそれぞれの普通ページ37

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「難しいよねー、僕は普通でいいよって思うんだけど」

「でもその普通も、僕の世界から見たときのものだし」

「みんなの世界から見た普通とは違うから、噛み合わない」

また今日の話をし始めた僕に

先生はまた、相槌を打ちながら相手してくれる。

「今まで僕は、性別がある人たちは違う世界の人たちだと思ってたから」

「自分がそこに入って、性別がある同じ人間を相手にしたとき」

「性別がこんなに難しいものになると思わなかった」

もちろん、周りの世界に合わせるのはたいへんだったけど

周りの世界に溶け込む自分も好きで、楽しんでた。

そこには、勝手に僕が創った境界線があったから。

ここからは周りの世界、ここからは僕の世界、って。

だけど突然その境界線がなくなって

はい向こうの世界の4人と話してみましょう、なんて

それがこんなに難しいなんて。

ちょっと疲れちゃった。

僕の世界に閉じ籠もりたいな。

僕の好きなものが詰め込まれた宝箱みたいなクローゼット。

そこが、僕の世界に閉じ籠もるための変身が出来る場所。

この病室でいつも想像してそこを楽しむけれど

やっぱり身をもって感じながら楽しみたい。

「潤にとって、性別のある世界は難しいか」

「うん、………今までのとはさ、違うんだもん」

「メンバーだもんね」

「うん。どんな人より一緒に居て、知ってて、信頼してるから余計に」

今まで合わせてきた世界とは、やっぱり

どこか、違うんだ。