beg.36 / mistake −A ページ37
「……話すことなんて、何も無いの。
……そこに写ってるのが、全てだから」
彼は、それしか言わなかった。
詳細を避けているのか、
本当にそれしか無いのか。
分からないけれど。
ただ、
彼の手が
微かに震えていることだけは、
安易に理解出来た。
「…怖くないよ」
ニノもそれに気付いたのか、
松潤の手をそっと握って
俯く彼の顔を覗き込みながら、そう言った。
それに続いて俺も、
もう片方の彼の手を握る。
「……っふ、…くっ…、」
ポロポロ、ポロポロと
重ねた俺らの手の上に
彼の涙が降ってくる。
小刻みに震える肩が、哀しい。
「…松潤、」
「………しょ、」
「え？」
「一緒…じゃ、ない…でしょ？」
ただ涙を流すだけだった彼が
ふっと俺らの目を見て
ユラユラと哀しい瞳を揺らしながら
ただ一言、そう呟いた。
その揺れた瞳に映る哀しみが
全てを拒否しているようで
目の前に居るはずなのに、
彼が、何処か遠くに感じた。
決して、近付いてはくれないと
決して、近付いてくれるなと
ひしひしと、伝わってくるようで。
「…そんなの、関係ないよ」
「あるんだよ。
この世の中、少し違いがあるだけで輪から外されるんだよ」
今まで口数が少なかったのが嘘みたいに、
食い気味にそう放った彼。
「……一緒じゃないって分かった瞬間、
輪に居ることは難しくなる」
「ならないよ！！」
「…ニノ、」
「難しくなんてないよ。変わらないよ。
そんなの絶対、変わらない」
高ぶる気持ちのまま話すニノを、
松潤はじっと見つめていた。
ニノがハッキリと言い放つと
松潤が、じゃあ、と口を開いた。
「……失敗作を、使おうと思う？」
「え…？」
「そういうことだよ。
わざわざ、傑作がある中で失敗作を使う人間なんて居ない。
失敗作だと分かれば、使わないでしょう」
“ 失敗作 ”
彼が放ったこの言葉が
鋭い刃となって心に刺さった。
正しい、と
胸を張って言えないことが
現実の残酷さを物語っていた。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年3月26日 2時
