beg.15 / illusion −A ページ16
「まず。二日酔いは、宅飲み？外？」
彼の二日酔いを何とかしなくちゃいけない、と始まった話し合いは
まるで事情聴取だ。
「……外。…昨日は、家…」
「は？家？なら制限かけれるだろ…」
松潤は、今までにないほど縮こまってる。
……いや、まて。
いま、家って言った？
「松潤、昨日はずっと、家に居たの？」
「うん、昨日は、ずっと家に…。
いや、でも、外行ったかな…」
「え、どっち？」
「飲んだから記憶曖昧なんだろ」
俺が問い質すと、
翔ちゃんが、そんなことどうでもいいというように遮った。
どうでもよくないんだよ。
それくらいはっきりしてるだろ。
松潤本当は、飲んでないんだから。
深夜2時の時点でシラフなんだから
それから帰って飲むなんてこと有り得ない。
連続の二日酔いで迷惑かけてるんだから、当たり前だ。
でも、家に居たか外に居たかだけははっきり言ってくれないと
シラフのまま記憶が無いなんて、怖いだろ。
「いや、松潤、ほんとに…」
「相葉さん、それはもういいよ。ほら、大野さん続けて」
いや。
俺が怖いのは、俺自身かもしれない。
松潤が本当に家に居たっていうなら
俺が見たのは松潤じゃないことになる。
それが怖いんだ。
何よりも。
「ごめん、1つだけ。1つだけ、確認させて」
「はぁ…相葉さん、なに？」
「松潤。松潤は、外で松潤って呼ばれるの、困る？
バレちゃうから困るって、思う？
困るから、潤ちゃんって呼んでとか…ある？」
2つの中にあるはずの瞬間が
片方にはあって、
片方には無いなんて。
「ふは、潤ちゃんって…
相葉くん、俺、そんなの無いよ？
バレるから呼び名変えてなんて、わざわざ言わないよ」
彼の中に、記憶されてないことが
俺の中に、記憶されているなんて。
「…………そっか」
あるはずのない出来事を記憶してるっていうなら
何よりも怖いのは、俺自身なんだ。
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作者名：つむぐ
| 作成日時：2019年3月26日 2時
