マリーゴールド(7) ページ26
公園の近くに停めていたらしい、いつもの白いレクサスの助手席に乗せられると、運転席に座った左馬刻さんがエンジンをかけながら口を開いた。
「マジであの女は俺の女じゃねェからな」
私のことを見ず、真っ直ぐ前を見つめアクセルを踏む左馬刻さんを私はちらりと見て答えた。
「あの女性が左馬刻さんの彼女だろうが何だろうが、私には関係ないことです」
「そう思うなら、ンでそんな面してんだよ」
「どんな顔ですか」
「拗ねたみてェな、寂しそうな情けねえ面」
低く落ち着いた声でそう言う左馬刻さんに、私は呟いた。
「…左馬刻さんが、私の知らないどこかに行っちゃうと思って、不安でした。
あの女性は、私の知らない左馬刻さんを知ってるのかと思うと、モヤモヤしました。それだけです」
私が目を伏せて言うと、数秒後にハッと軽く笑う声が聞こえて、思わず顔を上げた。
「ガキのくせに、一丁前に妬いてんのか」
「なっ……」
その言い草に反論しようとしたけれど、彼の表情を見て口を閉じた。
上からな口調も、ニヒルに笑った口元も、いつも通り。
だけど彼の目はどこか遠くにある思い出に浸って懐かしむような、愛おしむような、それでいてその赤い瞳から涙が溢れてもおかしくないような切なさを孕んでいた。
「…………そうかもしれません」
だから私は、彼の言葉を敢えて否定しなかった。
今の彼が纏う、少しの温もりでも触れてしまったら消えていく淡雪のような儚い雰囲気に、野暮な言葉はかけたくなかった。
「…すみません、面倒な女で。結局心配かけて迎えに来てもらうことになっちゃいましたし」
眉を下げて苦笑すると、左馬刻さんはフンと鼻を鳴らした。
「テメェは俺に世話焼かれるくらいが丁度良いんだよ。
…あー、肉食いてえ。近くに美味い店あるからよ、和解の証に焼肉付き合えや」
「よろこんで」
キブシ(1)Side : Samatoki→←マリーゴールド(6)
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★ロリポップ☆ - さくらさんこんばんは★ロリポップ☆です。冬の季節で段々寒くなってきましたね(///∇///)。今年の12月は忙しいシーズンですが体を壊さずにしてくださいね。空いてる時間がありましたら是非此方の作品をよろしくお願いいたします♪頑張って下さい。 (2021年12月4日 21時) (レス) @page34 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - さくらさんご無沙汰しておりますRoyal×Edenです。夜中冷えるなかお仕事お疲れ様です☆内容段々進んできてますね。頑張り過ぎて体を壊さないよう気を付けて下さい。影ながら応援してますね(/▽\)♪ (2021年11月1日 19時) (レス) @page32 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - さくらさんこんばんはRoyal×Edenです!!夜中までお仕事お疲れ様です。昨日まで仕上げた内容ですがヒロインは今、入間さんと話し合って最中左馬刻さんがヒロインを追ってきたそうでしたが次回は一体どうなるのか気になって仕舞います_((((;゜Д゜))) (2021年10月23日 21時) (レス) @page20 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
Royal×Eden - さくらさんおはようございます。Royal×Edenです!!夜中までお仕事お疲れ様でした( ^∀^)先程仕上げた内容ですがヒロインは今、入間さんと話し合ってますが家に送ろうとした時左馬刻さんと遭遇したそうですが一体どうなるのか次回を楽しみにしてます♪ (2021年10月20日 4時) (レス) @page25 id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
Cats-Venus - さくらさん» さくらさん初めましてCats-Venusと申します以後宜しくお願いいたします。先程此方の作品を読ませて頂きましたが左馬刻さんがヒロインに目をつけてたそうですが一体二人の関係はどんな展開になるか次回が楽しみです(≧▽≦)停止に悩んでても頑張って下さい(///ω///)♪ (2021年6月20日 20時) (レス) id: 09a4a3c559 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:さくら | 作成日時:2021年5月2日 15時