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第十八話:逢魔の刻 ページ21

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「A、A起きて」
『ん……?』
「もう部活終わったで」

一緒に帰ろう、とオスマンが差し伸べる手に寝惚けたまま手を重ねる。

どうやら寝てしまっていたらしい。学校で居眠りをしたのは何年振りだろう。辺りを見渡すとすっかり日は落ちて、夜の足音が聞こえ始めていた。

初夏といっても夜は冷える。冷涼な風が頬を撫で眠気を攫って行った。良い目覚まし代わりだ。

「Aが居眠りなんて珍しいなぁ」
『あぁ、そうだな。気が緩んでいるのかもしれない』

私が眠りこけている間に取りに行っていたのかオスマンから愛用の学生鞄が手渡された。

静まり返った運動場を横目に正門をくぐって帰路につく。当たり障りのない雑談を交わしながら歩いていると、ふとオスマンが「あ」と声を上げた。

『どうした』
「いや、ナチュラルに受け入れとったけど、今日車じゃないんやなって」
『登校は車だが、下校は公共機関を使うぞ』
「でも、いつも正門前に車停っとるやん」
『あれは使用人が勝手にやっているだけだ。やめろと言っているのだが……』

脳裏に犬の尻尾の如く手を振る使用人と悪びれる様子も無い専属ドライバーの顔が浮かぶ。

家に帰れば顔を合わせる羽目になるであろう彼等に思考を飛ばしていたが、それはオスマンが別の話題を出したことによって打ち切られた。

暫く彼との談笑を楽しんでいると目的のバス停留所が目と鼻の先にあった。

『オスマン、今日は世話になったな。また明日』
「ん、また明日めう〜」

オスマンは電車であるため、此処でお別れとなる。彼の背中が見えなくなったところでバスが到着した。定期券で乗り込めば家の近くのバス停留所まで十分程で到着する。

過ぎていく街灯を眺めながら、ただひたすら心地の良い揺られに身を任せていた。



───────…

《───ご乗車ありがとうございます──…》

少々無機質なアナウンスと共にバス停留所に降り立つ。

空を見上げれば学校に居た時と比べて大分暗くなっていた。

『少し急ぐか……』

家で私の帰りを待つ両親や使用人の顔が浮かび、さっさと帰路につこうと足を踏み出した瞬間、ぞわりと全身の毛が逆立った。


悪寒。


思わず握った拳に汗が滲む。


視線。


私は冷や汗を垂らしながら、真正面に居る"影"を見詰めた。


居る。


しばしの静寂。

"影"は裂けたように真っ赤な口を歪めた。



ミ ツ ケ タ





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第十九話:影→←第十七話:深紅と深緑



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鶴木(プロフ) - しおりんさん» ありがとうございます! (2020年9月13日 13時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
しおりん(プロフ) - あ″ぁ好き!シナリオ面白いです(*´∇`*)本当に!いい展開! (2020年9月12日 23時) (レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - Tさんさん» ひゃー!ありがとうございます!!女王様主人公大好きなので動かすのが楽しいです……更新頑張ります!! (2020年8月9日 18時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)
Tさん(プロフ) - 主人公の性格と世界線が凄い好きです…! もう、好きです!(2回目)無理しない程に頑張って下さい!応援しております〜、 (2020年8月9日 14時) (レス) id: 0fb9fed1ca (このIDを非表示/違反報告)
鶴木(プロフ) - #よにん。@変人系カップル&シトラ教教組さん» ありがとうございます!頑張ります! (2020年8月5日 16時) (レス) id: 9ab679ed16 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:鶴木 | 作成日時:2020年7月20日 22時

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