及川バースデー 8 ページ49
その日は、普通に練習から始まった。
いつも誰かの誕生日を祝う時は、部活の前の時間帯だった。
しかし、勘のいい及川は、自分もその時間に祝われると思っているだろう。
その可能性を疑った3年3人は、急遽誕生日会を部活の後にすることにしたのだ。
それまでは、誰も及川に誕生日おめでとう、と言わないようにすること、という決まりが部内では回っていた。
そのため、全員いつもと変わらない様子で練習に励んでいたのだ。
ただ1人、Aを除いては。
Aは、徹底的に及川を避けていた。
自分が何も喋らないようにするには、こうするしかなかったのだ。
本当は、罪悪感でいっぱいだったのだが、これで失敗してしまっては、全員が困る。
今日だけの我慢だと心を鬼にして、Aはひたすら沈黙を貫いた。
……はずだったのだ。
目の前には及川、後ろには壁。
完全に、袋のネズミ状態だった。
チラッと見上げると、不機嫌そうに眉を寄せた及川と目が合う。
そろそろ及川の方が、我慢の限界だったのだろう。
それもそうだ、もう1週間もこんなことを続けているのだから。
しかし、本当にあと少しだったのだ。
もう部活の時間は終わり、片付けの時間に入っている。
Aが水道で1人、スクイズを洗っている時を狙って、及川は問い詰めに来たのだ。
ここまで来てしまえば、もう弁解など出来ない。
壁と及川に挟まれながら、Aは心の中で岩泉たちに謝った。
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sala-ri✰︎ - 面白かったです!!!!更新頑張ってください!!!楽しみにしてます(*^^*) (2022年6月20日 17時) (レス) @page3 id: 94069447b5 (このIDを非表示/違反報告)
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