「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ19)

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113. 純粋ないい子ページ19

貴「どう……して？」

てっきりこれで安心してくれると思っていたAは、轟の様子にタジタジだ。

轟「だって、僕がいなかったらお母さんがお父さんに虐められちゃう！」

その言葉を聞いた途端、Aの顔から笑顔が消えた。

目に涙を貯める轟は、本当に純粋ないい子なのだろう。

だからこそ、エンデヴァーのやってることが余計に悪く見えてしまっていたのだ。

エンデヴァーのしたことは、教育的に見れば許されることではない。

しかし、轟から過去を聞いていても、Aがエンデヴァーを嫌いになれないでいるのは、そこにエンデヴァーの強くなりたかったという思いがあることを知っているからだ。

上昇志向が高く、ヒーローとしての誇りを持っていて、事件解決数史上最多となっても邁進することなくひたすら歩み続ける不屈のヒーロー。

それは、ヒーローとして見れば誰もが憧れるカッコイイ姿だ。

でも、この時の轟はおそらく、エンデヴァーの意図を知らない。

ただわけも分からず、5歳になった途端急に厳しい鍛錬が始まったのだ。

熱した鉄から手を引っ込めるように逃げ出した轟は、お母さんという心の支えが出来た。

そのお母さんも、エンデヴァーから轟を庇って暴力を降るわれ、精神的に病んでしまったのだが。

まだこの時は、お母さんも頑張っている時期だったのだろう。

そのお母さんと離れ離れになれば、それは不安にもなるし、心配にもなるだろう。

そして、生憎Aには、今の轟を安心させてあげるような言葉をかけてやれる自信がないのだ。

大丈夫、と言ったところで、いったい何が大丈夫なのだろうか？

どうしたら、轟の不安と心配を取り除いてあげられるか、Aは必死に考えた。

そして、ある考えが浮かび上がった。

貴「轟君、あのね、これは本当は内緒なんだけどね、ここに轟君が来たのは、轟君が個性を上手く使えるように特訓をするためなんだよ。
家族じゃなくて、ここには教えてくれる先生がいるから、無理矢理鍛えられることもないし。
だから安心して？」

そう言って、Aは轟に手を伸ばした。

しかし、その手は届かずに轟の手に払われた。

轟「やだ！」