「愛」ってなんですか!?【轟焦凍】 (ページ13)

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107. 緑谷で良かったページ13

貴「苦しくなかったって言えば、嘘になる。
でも、あの時は苦しいよりも、疑問の方が強かった。
なんで誰も私を見てくれないんだろう？なんで私は生まれてきたんだろう？ってね。
それでも、今まで反抗的な態度を取らないで頑張ってきたのは、ヒーローになりたかったから。家族には無理だって言われたけど、私は出来るって信じてる。だから、今はそこまで苦じゃないかな」

Aはそう言って、へらっと笑った。

昔はヒーローになれないと言われて諦めてた時期もあった。

でも、憧れの雄英高校に入学して、自信は増していってる。

言葉で抗うことは難しい。

でも、ヒーローになれれば、無理じゃなかった、こんな自分でもなれたよって行動で抗える。

ヒーローになることは、Aにとって唯一の希望の光なのだ。

緑谷は、そんなAを見て、少しホッとしたように息をついた。

緑「そっか。それなら良かったよ。轟君が、ずっと水無月さんのこと心配してたから」

貴「轟君が？」

思わぬ人物に、Aは目を丸くした。

緑「うん。自分は体育祭で自分のしたいことを見つけられたけど、水無月さんはまだ苦しいところから抜け出せてないんじゃないかって」

緑谷の言葉に、Aはオールマイトグッズにはしゃぐ轟をチラッと見た。

轟がまさか、自分のことでそんなに心配してくれているとは思わなかったのだ。

緑「僕、カグツチのこと結構知ってたからさ、君が個性婚で生まれたこと、最初からなんとなく分かってたんだ。その後、轟君の過去を聞いて、余計に君のことが気になった。それで、つい轟君に無理言って聞いたんだ。ごめんね」

少し申し訳なさそうに頭を下げた緑谷に、Aは慌てて首を振った。

貴「だ、大丈夫だよ……って言ったら、ちょっと違うけど。でも＿＿カグツチのことを知ってたのが、緑谷君で良かった」

本当に心の底から良かったと思った。

これがもし、この前の文房具屋にいた男子高校生みたいな人だったら、また失敗作だということを意識させられることになったかもしれなかったからだ。

恐る恐る顔を上げた緑谷に、Aは穏やかに微笑んだ。