【HQ】鈍感少女番外編6 (ページ28)

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そうだ、兵庫に行こう 26 ページ28

突然聞こえた声に、私は手を止めた。

あれ……私、今、何しようとして……。

「は……？おい、やめろ、そんなことしたらあかん！」

カッターを持っていた手ごと、誰かに下ろされる。

視界がボヤけて誰だか分からないけど、声だけは妙にハッキリ聞こえた。

「おい……何させようとしてんねや、自分？何吹き込んだんか知らんけど、人の命をなんだと思ってんねん？」

私と話していた時とは別人と思うほどの、低い声。

怒ってくれているのに、その時はそう認識することが出来なかった。

それが侑さんの本性なのだと、失礼なことを考えていたのだ。

私からすれば、女の子も侑さんも両方怖かった。

カタカタと掴まれている手が震える。

急にカッターが酷く重く感じて、私は刃を出しっぱにしたまま床に落としてしまった。

「や……いや、ごめ……ごめ、なさ……」

胸がギュッと苦しくなる、懐かしい感覚。

もうすっかりなりを潜めていたはずの息苦しさが、久しぶりに戻ってきた。

どうやって息をするのかが分からない。

どう頑張っても、苦しいことに変わりはない。

周りのことなんて一気に分からなくなって、ただ自分の切れそうな呼吸だけが耳に響いていた。

懐かしい声が、嫌いな声が、怖い声が、耳の中に木霊する。

それなのに、震えて謝ることも出来ない。

それに焦って、パニックになって、なんとかしようとしたくても、必死に呼吸することしか出来ない。

ああ、それならいっそ、呼吸をやめてしまえば、楽になれるんじゃ……。

そんな考えがちらりと頭をよぎった時だった。

「若葉さん！」