そうだ、兵庫に行こう 25 ページ27
「ほら、早く死んで」
目の前に投げ出されたのはカッターナイフ。
これで、手首でも切れっていうのかな?
そんなことしたら、血が飛び散ってみんなに迷惑がかかるのに。
何か言い返そうにも、女の子はずっと「死んで」と呟き続ける。
それが徐々に違う声と言葉に聞こえてきて、手が震えてきた。
知ってる……この声を私は知ってる。
もう1年半前に聞いた、私の生活が全て変わったあの日に。
目の前にいる女の子の輪郭が揺らいで、見覚えのある顔に徐々に変わっていく。
私の、両親の顔に……。
ああ、ごめんなさい……私はあの時死ねなかった。
あんなに地獄のような日々を過ごしていたくせに、死ぬことが怖かった。
死ぬ勇気なんてなかった。
今なら……いや、今も出来ない……怖い。
お父さんの存在がチラつくくせに、死にたくないと思ってしまう。
恐怖の方が勝ってしまうのだ。
それでも、女の子の「死んで」という言葉に従うように私はカッターに触れる。
自分の気持ちと行動がチグハグなのにも気づかずに、私はカッターを手に取って自分へと向ける。
あの時、死ぬ方法なら教わった。
手首の裏を深く傷つけるか、首を切るか。
お腹はすぐに死ねないみたい。
それなら、1番いいのは首……。
無意識に思考は死ぬ方へと向かっていって、嫌だという気持ちよりも従わなきゃなんて思っていた。
その時だった。
「おい……何してんねん?」
13人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「ハイキュー」関連の作品
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ