五十七話だけど無理じゃね? ページ8
その日は一晩中泣いた
しのぶさん、カナヲちゃん、アオイちゃん、他にも色んな人が部屋に来てくれたけど
誰にも会いたくなかった
会えばもっと悲しくなる
いつかもう一度こんな事が起きてしまうんじゃないかって
この未来を変えることはできないのかもしれないって
『………』
泣いている間、自分を抱くような体勢になっていたからか、両肩には爪がくい込んだであろう傷跡があり、泣き足りない分の涙を流すかのように血が流れている
痛みも今は感じない
いつの間にか私にとっての煉獄さんは“推し”ではなく“大好きで、大切な人”になっていた
『……阿呆すぎ』
一週間経っちゃった
でもまだ立ち直れてない
ご飯は廊下に置いてもらってるやつを食べてた
つくづく役立たずで足でまといだな、自分
もしかして、病んでる…?
胡蝶「…翡翠」
『……はい』
胡蝶「入っても?」
『……まだ無理です、ごめんなさい』
ガラッ
『!?』
え、私今無理って言ったよね?
胡蝶「貴方の気持ちはよく分かる。私だって同じ気持ち。だけど全て本当のことなの」
『…わかってますよ、でも、…こんなに、重いものだって思ってなくて』
胡蝶「…貴方が訓練をせずにもう一週間。炭治郎君達ももう訓練に励んでる」
『っ…!もう無理かもしれないんですよ!!いつまで経っても日輪刀は振れないし大切な時に自分は動けないし!!これ以上…!!誰もいなくならないで欲しい…!!みんな大好きなんですよ…っ!!』
胡蝶「……」
バチンッ
『っ…』
……痛い
胡蝶「甘ったれたことを言うんじゃない!!日輪刀が振れない?それは翡翠の努力が足りないから!大事な時に動けない?それは翡翠が弱いから!!」
こんな怒り方をするしのぶさんは初めてで、叩かれた頬の痛みなんか今は忘れていた
胡蝶「いい!?失ったものは帰ってこないの!!どれだけ悔もうが、死んでしまったらそれで終わりなの!!」
胡蝶「貴方が私たちの事が大好きなのは知ってる!!それだけ守りたいなら、強くなりなさい!!どんな敵をも倒せるように、もう失わないように、貴方は強くならなければならない!!」
『しのぶさ…』
しのぶさんは、泣いていた
そうだ、しのぶさんだってずっと前にカナエさんを亡くしてる
大事に育てた継子だって鬼に殺されてる
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作者名:望月 | 作成日時:2021年1月8日 22時