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第58羽 ページ12

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あれから、ひと通りの事情聴取が終わった。皆私が休めるようにと見舞いをした後に病室を出たが、しばらくは1人で外出しないようにと念を押された。流石に心配のし過ぎだと思う。

暗くなった病室で1人、目を閉じる。

『なんか、嫌だな。』

暗くなると、前にジンに閉じ込められていた部屋を思い出す。私の好みに合わせて綺麗に飾り付けられていたが、16年間も同じ空間にいれば辟易していた。

『……駄目だ、やっぱ寝れない。』

ベッドから起きてみる。身体はまだふらつくけど、立てないことはない。物に掴まりながらカーテンを開けた。綺麗な三日月が出ている。

1人になるとどうしても、思い出す。大嫌いなあの男の顔。いやらしい手つき。憎たらしいあの白髪と狂気を含んだ冷たい瞳を。
本当、趣味の悪いことだ。

ガラッ

『!』

病室のドアが開いて、私は驚いて振り返る。

「あら?起きていらっしゃったんですか?」

病院の看護師さんだ。

「ごめんなさいね、驚かせました?」

『いえ…見回りですか?』

「はい…寝つけませんか?」

『…はい。でももう寝ます。』

「そうしてください。お身体にも障りますから。」

そう言って愛想の良い笑みを浮かべ、看護師さんは出ていく。

『ビックリした……』

大丈夫。私は今、白雪Aなんだから。
誰も私を知っているわけない。
誰も私に気づくわけない。

『大丈夫、大丈夫…』

もう寝よう。嫌なことを考えてしまう前に。

カーテンを閉め、ベッドに戻った。
綺麗な三日月の光がカーテンの隙間から差し込む。静かな夜だった。

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only07(プロフ) - ベルモットとオリヴィアちゃんが幸せになってほしいです……! (1月14日 20時) (レス) @page45 id: 621931103c (このIDを非表示/違反報告)
おかき(プロフ) - 続きが気になりすぎて眠れません🥺更新待ってます!!!! (12月11日 21時) (レス) id: 3161f0695a (このIDを非表示/違反報告)
凛愛(プロフ) - とても好きです…🥹 (11月26日 22時) (レス) @page43 id: f83a603b36 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - あああああああ好きです (9月16日 19時) (レス) @page45 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
full.(プロフ) - ベルさん» ほんとですか!泣長ったらしいお話ですが付き合っていただけたら嬉しいです!コメントありがとうございます! (6月19日 1時) (レス) id: 73b8919793 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:full. | 作者ホームページ:http://utanai.nosv.org/u.php/hptyomatu/  
作成日時:2023年3月10日 20時

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