広い空の下で (ページ11)

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3話ページ11

『変、』

「ん？なんか言ったか？」

『何も言ってないですよ。
それより私はなんでここに？』

なにかが変わった。具体的には分からないけど俺たちの前に壁が現れたような気さえする。

『特に無いようでしたら帰りますね。仕事もあるので。
お邪魔してすいませんでした』

ペコりと頭を下げ、すぐに背を向けて走りだす。
あっという間に姿は見えなくなったが、それでもおれはそこから目が離せないでいた。

「なんだ突然。まあ邪魔者がいなくなってラッキーか。
サボ、今日も勝負しよーぜ───……

っておいサボ！聞いてんのか！」

怒鳴るエースの声が遠くに聞こえる。
一瞬だけ見えたあの寂しそうな横顔が、どうしても頭から離れないでいた。

・

『変、か……』

言われ慣れてきた言葉だ。
今更傷ついたりしない。でも……

『直接は、ちょっとびっくりしたなー』

いつもは隠れて言われていたから、面と向かっては初めてだ。

やっぱり私は他の人と何か違うのかな。
特に今回は超能力者ってバレてない状態だった。

でも変なやつと言われた。
ってことはつまり何かあるんだろう。

私の知らない、他の人間との違いが。
それならそれで早く見つけなきゃいけない。

外の世界は同じじゃないとダメだから。
そうしないと私みたいな奴は殺されてしまう。

生きるために。
生きて、復讐を遂げるために。

その為になら化け狐にだって、なってみせる。

「お、ステラ！早かったな！
ゆっくりしてきて良かったのに」

『受け入れてもらった以上、仕事はしないとですよ！
それに私もなんで呼ばれたのかわかんないんですよね』

「そりゃ災難だったな！」

ガハハと全てを吹き飛ばすような笑い声。
部屋中から匂うこの感じからしてお酒を呑んでたんだろう。
その証拠にほら、あらゆる場所に人が転がっている。

その隙間を縫って廊下へ出る。
そして武器庫の方へ歩く。

正直武器なんて扱ったこともなければ磨いたこともない。
靴もそうだ。磨いたことなんてない。

でも前日のうちに色々教わった。
それをそのままやれば良いだけだ。
幸い私は目がいい方だ。一度見れば大抵なんとかなる。

教わった日のことを思い出しながら、目の前の剣を手に取る。
それはところどころ赤黒い血が飛び散り、全体的にくすんだ、まさに＂賊の者＂の剣だった。