広い空の下で～約束～１ (ページ10)

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2話ページ10

先行く彼を追いかけること十数分。森を抜け、ゴミの山を越え、ようやく追いついた背中の先に見えるは大きな木。

「サボ！！サボいるか！！」

「おお、エース！それにこの前の！
ほんとに連れてきたんだな！」

「お前が言ったんだろ！
だいたいいっつもお前は・・・」

着いて早々、エースさんが掴みかからん勢いで捲し立てる。
でもそこに不穏な空気は無く、どこか穏やかだった。

きっといつも通りなんだと思う。仲良しだということがすぐに分かった。そんな関係性がちょっぴり羨ましかった。

｢｢おい！そこのお前！！！｣｣

『はい！？』

「合図しろっ!!!」

『……へっ？』

急に呼ばれ、しかもよく分からない指示に驚いて、変な声が出る。

｢｢早くしろっ!!｣｣

でもそれ以上に、喧嘩中にも関わらず息ピッタリな二人が面白くて、少し、ほんとに少しだけ笑ってしまった。

「笑ってんじゃねーよ」

『わわっごめんなさい!!!……えーっと』

が、それもエースさんには聞こえていたらしく怒られる。
地獄耳じゃんと思いながらも、合図をしようとしてピタリと止まる。

──合図って、どんな？

・

手を上げたまま不自然に固まった、以前倒れていたやつ。
なんだなんだと首を傾げ、尋ねれば困ったように笑って手を下ろした。そして一言、

『合図って、なんの合図ですか？』

妙な沈黙が訪れる。
おれたちは揃ってポカンとしていた。

合図も知らねえのか。
……そうか。

『ち、違うんですよ！合図って言ったって色々あるじゃないですか！だからどれかな〜って』

「この状況じゃ一つしかないだろ！」

『え!!!えっと、よーいドン。とか？』

いっそ清々しいほどの棒読み。
でも顔は真剣で、それがたまらなくおかしかった。

「んなわけねーだろ！！バカか！
サボ！お前も笑ってんじゃねェ！」

「そう怒んなってエース。
でもお前、変なやつだな～」

エースがここまで感情を露わにするのは珍しい。

いや怒ってるだけなんだけど、なんていったらいいか……
エースは基本他人が嫌いで、氷のような冷たさと鋭さで遠ざけてきた。

そんなエースがどうだ。嫌悪感は丸出しでもいつものような冷たさがない。あいつもあいつで世間知らずのお嬢様って感じだけど違う気もする。

だから変なやつだと思った。

たった、それだけの事だった。