１０９話 優しい微笑み ページ21
.
「え......」
突然の事に思考が停止する。
華が......死んでいる？
混乱する俺の頭の中に、別の記憶が流れてきた。
「村の害虫とつるんでる華も、あいつと同じ害虫だ〜！」
「近づくと菌が移るぞ！」
「あの子、忌み子のあいつと関わってるんですって」
「あら本当？良い子だと思ってたんだけどね〜」
「ほら、ここから飛び降りてみろよっ」
「害虫なんだから、そう簡単にはくだびれねぇよ」
「止めてっ！止めてよぉ！」
______アハハハハ！！
村の子供達に追い詰められた華は、崩れ落ちる崖に巻き込まれていった。
そうだ......そうだった...。
華は......華は...。
俺に関わったせいで死んでしまったんだ。
その後の記憶からは、鬼である俺の方にもある。
鬼になって、村人を全員喰った俺は、ここに住み着くようになったんだよな。
全てを思い出した俺の前に、ボウッ、と何かが現れた。
《鬼亊名......》
「......華」
そこに居たのは、大好きな華だった。
《思い出したの？》
「ああ......思い出したよ。全部、全部...」
《そっか...》
相変わらずの美しい声で語りかけてきた華は、少し顔を俯かせた後、ゆっくりと上げた。
その目には、うっすらと涙が浮かんでいた。
その表情に、俺は目を見開く。
泣いている彼女と、驚く俺。
暫く見つめ合うと、華は、掴めば折れてしまいそうな程細く白い腕を俺に差し伸べてきた。
「何して──」
《一緒に、行こ？》
俺の言葉を遮って言った彼女に、俺はさらに目を見開く。
だが、その意味に気づいた俺は、首を縦には振らなかった。
「一緒には、行けない。
俺は大勢の人を殺したからな。
......それに、俺は君のことをころ──」
《そんなの関係ないわっ！！》
「えっ」
俺は彼女の顔を見た。
大きな瞳から、ボロボロと大粒の涙を溢す彼女は、言葉を続ける。
《私はただ、貴方と一緒に居たいだけなの。
''鬼''の貴方じゃなくて、''鬼亊名''の貴方に》
彼女はそ言い終えると、俺が大好きなあの暖かい微笑みを浮かべた。
それと同時に、俺の目からは暖かい涙が流れ出た。
止めようと思っても、俺の意思とは関係なしに流れてくる。
そんな俺を、包み込むように抱き締めてから頭を撫でてくる華。
「ごめん......、ありがとう......！」
華を抱き締め返し、俺は赤子のように泣きじゃくった。
１１０話 安らかに、お眠り下さい→←１０８話 暖かい記憶・冷たい記憶
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 275人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
小桜(プロフ) - 黒姫の夢さん» 心優しいコメントありがとうございます！本当に励みになります。黒姫の夢さんも書いてらっしゃるんですね。応援してます(^-^) (2021年11月19日 22時) (
レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
黒姫の夢 - 更新、無理せずに頑張ってください。 とても面白かったです。 私も暗殺教室の夢小説を書いています。 体に気を付けてくださいね？ (2021年11月19日 22時) (レス) id: 89b081aabc (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - おもちさん» コメントありがとうございます。更新楽しみにしてくれているのに、全然できなくてすみません……。来週テストが終わるので、その時は沢山更新します！ (2021年11月12日 19時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
おもち - 更新楽しみにしています！テスト頑張ってください (2021年11月12日 19時) (レス) id: 31f3b0e2bf (このIDを非表示/違反報告)
小桜(プロフ) - カンナさん» コメントありがとうございます。もうすぐテスト期間に入りますので遅くなるかもしれませんが、精一杯頑張って更新します！ (2021年10月30日 12時) (レス) id: 8b4a915ba2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：小桜 | 作成日時：2021年10月8日 22時
