ハイエナの交渉術 ◈Ruggie◈ ページ9
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今日最後の授業が終わり、教室を出て足早にオンボロ寮へ向かう。
その道中で、ありとあらゆる方向から降り注ぐ視線、視線、視線。
"異世界から召喚され、魔力を持たない唯一の生徒" という肩書きを持っている自分にとって、こんなことは日常茶飯事であった。
──でも、今は訳が違う。
「なあ、あそこにいるのって……監督生、だよな？」
「そうだけど……あれ？監督生って──」
"獣耳なんて生えてたっけ?"
それは、錬金術の授業で起こった。
獣人属のホルモンが含まれた薬液を扱う実験をしていた時の出来事である。
実験中、案の定グリムがひっくり返し、案の定私の頭へダイブ。
そこまではよくある展開だし、皮膚に触れても害はない薬品なので怪我はなかった。しかし──
「頭に被った薬液を舐める駄犬がいるか……？」
『でも割とおいし──』
「バッドガール！！」
昼食前の授業なんだから、そんなに怒らなくてもいいのに。
事を簡単にまとめると、かかった薬液を舐めたら、獣人もどきになってしまったと。ご丁寧にしっぽまで。
いつ戻るかは分からないとクルーウェル先生が言っていたけど、特に体に異常もないので別に大騒ぎする必要もない。
当のグリムは反省の素振りもなく、美食研究会とやらの部活動に行ってしまった。
今日はとにかく視線がすごい。何人か面識のない人に話しかけれらたし、もう早く帰りたい。
人混みを抜け、
ちょっと遠回りだけど、人目を避けつつ寮へ──
「──おっ、噂通りマジで生えてるんスね……シシシッ」
立ち止まっていた真上の庭木から聞こえた、揶揄うような笑い声。
同じ種族の匂いに、全身の毛が逆立つ。
即座にその場を立ち去ろう踵を返すも、その動きを読んでいたかのように目の前に着地した。
「──そんなカワイイお耳生やして、どーこ行くんスか？Aくん」
『……ラギーくん』
彼は獲物を見つけた獣のように、悪戯っぽく笑った。
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作者名：はさみまもの | 作成日時：2021年11月13日 16時
