酒場の主の帰還 3 ページ9
「(…あれ?痛くない)」
咄嗟に身構えていたAが閉じていた瞼をゆっくり開けると、目の前に立っていたはずの女性は居なくなっていた。
その代わりに、厚底の茶色い革ブーツが視界に入る。
「__困るねぇ。アタシの店で火の魔法なんか出されたら」
足元から上へと視線を向けると、マグナムリボルバーによく似た拳銃を右手に構えたサキが、怒りに燃える表情で立っていた。
「それになんだい、アンタのその態度は。少なくとも酒を飲みに来た客が取るべきものじゃないだろ」
「くッ…!」
彼女が言葉を投げた先を見ると、先程までAを蹴りつけていた女性が、椅子だった木片に埋もれながら腫れあがった右の頬を両手で抑えている。
状況から察するに、サキが女性を殴り飛ばしたのだろう。
「今すぐ出ていきな。そして二度と来ないでおくれ。じゃないと、アタシの右手のコレがアンタの心臓めがけて火を噴くよ」
「このアマ、ワタシの顔に傷をつけやがって…!手下たちが黙ってないんだから!」
「手下ねぇ…なるほど。アンタどっかで見た顔だと思ったら、東の森を根城にしてる山賊の頭かい。確かにまた大勢に襲われちゃあ堪らないねぇ。
なら、こっちも釘を刺しておこうじゃないか」
バンッ!!という銃声が酒場にいた全員の耳を強く痺れさせる。
サキの放った銃弾は、女性の首のすぐ横を通り抜け、柱に深々とめり込んだ。
数秒後、女性の首筋に血がじわりと滲む。
「ヒッ!?」
「聞いたことないかい?西部大陸からの移民だけで構成された、傭兵ギルド『
手練のガンマンが揃う、銃撃戦特化のイカれた集団さ」
「そ、それが何だって言うのよ!」
「アタシがそのギルドの3代目マスターだった…って言ったら、アンタはどうする?」
リボルバーを構えたまま嗜虐的な笑みを浮かべて舌なめずりをするサキ。
ただならぬ彼女のオーラに臆した女性は、腰を抜かしながらしゃかしゃかと出入口まで這っていき、「覚えてなさいよ!」と捨て台詞を吐いて夜の闇へと消えていった。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時