朝焼けの中でさよならを 4 ページ6
「…よっ、ととと」
朝市から戻って賑やかな朝食を済ませたスティングは、日が昇りきらないうちにと荷物を纏め、仮住まいだった部屋を後にした。
巾着が括られた大きなリュックサックを背負い直してよろけた彼を、翼を展開したレクターが後ろから押し戻して支える。
「サンキュー、レクター」
「これくらいおやすい御用ですよ!ハイ!」
ようやくバランスを取る事に慣れてきたスティングが、立ち止まって振り返り、少し遠くなった酒場の裏口の前を見る。
朝焼けが白壁に反射し、黄色がかった眩い橙の陽光が、見送りに出ているAたちを後ろから照らしていた。
まるで自分の弟を見送るような優しい目でスティングとレクターに手を振る3人に、スティングは声を張り上げて別れの言葉を告げる。
「Aさーん!お世話になりましたー!」
「こちらこそ色々ありがとう!また会おうね!」
「アルジュナさーん!次は俺が勝つからなー!」
「幼き戦士の旅路に幸運を。どうか、お気をつけて」
「鈴鹿さーん!今度会ったらガチバトル!約束だぞー!!」
「わかってるってば!スティングこそ、どっかで勝手に野垂れ死んだりしたら許さないんだからねー!」
三者三様の返答を得て満足気な笑みを浮かべた彼は、幼い身でありながらも一人前の旅人のようにしっかりとした足取りで歩き出した。
彼に倣って「お世話になりましたー!」と全力で叫んでいたレクターもそれに気づいて、最後に3人にペコリと頭を下げ、師匠の少し後ろをついて行く。
その背中が見えなくなるまで見送り続けていたAたちは、一抹の寂しさをかき消すような朝焼けの光に目を細めた。
「うわぁ、綺麗な朝焼け…!」
「う〜ん最高!今日も良い日になりそうじゃん?」
「サキさんもじきに帰ってくるでしょうし、清掃作業だけでも片付けておきましょうか」
「賛成!私、ホウキ取ってくるね」
「じゃあ私は水汲みしてこよーっと!」
希望に満ちた新しい朝が、今日もドーリスの町にやってくる。
意気揚々と清掃に取り掛かった3人。
彼女たちが酒場に届けられた朝刊新聞によって、サキの出掛け先である定例会の会場が怪物に襲われ壊滅した事を知るまで、あと数十分。
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作者名:空思鳴 | 作成日時:2020年9月19日 1時