英霊魔導士、フィオーレを征く【第２幕】 (ページ48)

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霊脈上の一軒家７ページ48

｢キッチンにリビング、お風呂にトイレ！
いいじゃんいいじゃん、完璧じゃーん！｣

｢鈴鹿ちゃーん！こっちに2階へ続く階段見つけたー！｣

｢マスターやるぅ！ちょっと待っててー！｣

｢マスター！鈴鹿！あまり走り回ったら埃が舞いますよ！！｣

新しい拠点の中で子供のようにはしゃぎ回る2人にアルジュナが注意を飛ばすと、階段へ向かう途中の鈴鹿御前がリビングの入口からぴょこんと顔を出した。

｢ジュナっちも早く来なよ！部屋割りは早い者勝ちね！｣

｢待ちなさい、そこは平等にクジ引きでしょう！｣

リビングから出てきた鈴鹿御前は、心の底から楽しそうにそう言ってアルジュナの手を引く。
もう何を言っても止まらないだろうと察したアルジュナが大人しく引っ張られつつ鈴鹿御前について行くと、2階へ上がった階段の先でAが待っていた。

｢2人とも見て見て！個室が3つもある！｣

興奮冷めやらぬ様子でキラキラと瞳を輝かせるAに、鈴鹿御前は｢マジ！？｣とテンションをさらに昂らせ、近くの部屋の扉を開ける。

｢おぉー！広さはカルデアの個室と同じくらい？
イイ感じの雰囲気じゃん！｣

6畳ほどの面積の部屋には、ベッド、クローゼット、ドレッサー等の必要最低限な家具が配置されている。

｢私、この部屋にしよーっと！｣

焦げ茶色の籐で編まれた椅子に腰を下ろした鈴鹿御前が高らかに宣言した。
座面に敷かれたクリーム色のクッションは、マシュマロのような柔らかさで彼女の臀部を包み込んでいる。

｢どの部屋も同じくらいの広さで、似た家具が置いてあるみたい。アルジュナはどこがいい？｣

いつの間にか隣に立っていたAにそう問われ、アルジュナは一度部屋の外に出た。
目の前にある物置の隣に視線を移すと、扉が全開になっている部屋が目に入る。
Aが探索ついでに換気の目的で開け放ったであろうその部屋には、白色の籐で編まれた家具が並べられていた。

｢色は違いますが、物は同じのようですね…｣

ミニテーブルの前に置かれている椅子の座面は、鈴鹿御前が座っていたそれと類似した紺色のクッションで覆われている。
少しだけ、ほんの少しだけそのマシュマロのようなクッションが気になっていたアルジュナは、誰も見ていないことを確認した後、ふわふわのクッションに遠慮がちに腰を下ろした。

…数秒後、様子を見に来たAにバッチリ目撃されてしまう運命にあるのは、もはやお約束の展開だろう。